ミュンヘンにIoT関連が集積する理由
「製造業が集積し、そこでのビッグデータを活用できる点が大きい」
小雪の舞う中、ドイツ・バイエルン州ミュンヘン市中心部の広場を埋め尽くすクリスマス・マーケットは大にぎわい。熱いグリューワインを冷えきった体に流し込むと生き返る思いがする。
文化・芸術都市のミュンヘンはシーメンスやBMWなどが本社を置く屈指の工業都市でもある。最近ではIT関連が集積する一方、従来型企業も様変わり。創業170周年を迎えたシーメンスの社長、ジョー・ケーザーさんは「今後5年から10年の間に、これまでで最も革新的な企業になる」と、デジタル事業へのシフトを明言する。
米国のGEが欧州の研究開発拠点を置くほか、IBMはIoT(モノのインターネット)の世界本社を2年前に開設。米インテル、米マイクロソフト、中国ファーウェイもIoT関連の拠点を持つ。
進出が相次ぐ理由について、バイエルン州駐日代表部代表のクリスティアン・ゲルティンガーさんは「世界に向けてオープンであること、製造業が集積し、そこでのビッグデータを活用できる点が大きい」と説明する。
「新しい酒は新しい革袋に」とは聖書の戒めの言葉。古い街並みや慣習を残しつつ、新技術を率先して受け入れる新たな環境づくりが、企業集積につながるのだろう。
ドイツの電機・エンジニアリング大手シーメンスが産業向けデジタル事業を加速している。ミュンヘン本社でこのほど開いたデジタル事業説明会でジョー・ケーザー社長兼最高経営責任者(CEO)は、「2018年の研究開発(R&D)ではデジタルファクトリーが最大の投資先になる。競争は厳しいが、将来の収益のためにこの分野に引き続き手厚い投資を行う」と断言した。
デジタル事業の17年9月期の売上高は52億ユーロ(約6900億円)。45億ドルで買収した電子回路設計ソフト大手、米メンター・グラフィックスの分が加わり、前年同期比20%という高い伸びを示した。内訳はソフト関連が40億ユーロ、デジタルサービスが12億ユーロ。これに対し、17年9月期のR&D投資は総額52億ユーロで、デジタル事業関連が12億ユーロを占める。さらに18年9月期にはR&D全体で56億ユーロ(約7400億円)以上に増額する計画。14年9月期との比較では40%増の高水準となる。
このうち5億ユーロは会社のコア技術枠として、金属積層造形や自律ロボット、データ分析・人工知能(AI)、製品・製造設備のデジタルシミュレーションが行える「デジタルツイン」といった分野に集中投資する。
一方、16年にリリースしたクラウドベースのIoT(モノのインターネット)向け基本ソフト(OS)「マインドスフィア」では、製造業だけでなく電力、鉄道、ヘルスケア、ビル管理、スマートシティーなどにも広がりを見せる。SAPやマイクロソフトなどに続き、18年1月から米アマゾンウェブサービス(AWS)のクラウドサービスでも提供開始予定だ。
加えて同OSによる顧客の応用ソフト開発をサポートする拠点組織「マインドスフィア・アプリケーション・センター」の展開も進め、現在まで世界20カ所に設置済み。ただ、日本にはまだない。
これについてローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は日刊工業新聞社の取材に対し、「日本では自動車産業をはじめPLM(製品ライフサイクル管理)ソフトで多くの顧客を抱えている。詳しく話せないが、日本に設置する可能性は高い」と前向きに検討していることを明らかにした。
文化・芸術都市のミュンヘンはシーメンスやBMWなどが本社を置く屈指の工業都市でもある。最近ではIT関連が集積する一方、従来型企業も様変わり。創業170周年を迎えたシーメンスの社長、ジョー・ケーザーさんは「今後5年から10年の間に、これまでで最も革新的な企業になる」と、デジタル事業へのシフトを明言する。
米国のGEが欧州の研究開発拠点を置くほか、IBMはIoT(モノのインターネット)の世界本社を2年前に開設。米インテル、米マイクロソフト、中国ファーウェイもIoT関連の拠点を持つ。
進出が相次ぐ理由について、バイエルン州駐日代表部代表のクリスティアン・ゲルティンガーさんは「世界に向けてオープンであること、製造業が集積し、そこでのビッグデータを活用できる点が大きい」と説明する。
「新しい酒は新しい革袋に」とは聖書の戒めの言葉。古い街並みや慣習を残しつつ、新技術を率先して受け入れる新たな環境づくりが、企業集積につながるのだろう。
シーメンス、デジタル事業加速
ドイツの電機・エンジニアリング大手シーメンスが産業向けデジタル事業を加速している。ミュンヘン本社でこのほど開いたデジタル事業説明会でジョー・ケーザー社長兼最高経営責任者(CEO)は、「2018年の研究開発(R&D)ではデジタルファクトリーが最大の投資先になる。競争は厳しいが、将来の収益のためにこの分野に引き続き手厚い投資を行う」と断言した。
デジタル事業の17年9月期の売上高は52億ユーロ(約6900億円)。45億ドルで買収した電子回路設計ソフト大手、米メンター・グラフィックスの分が加わり、前年同期比20%という高い伸びを示した。内訳はソフト関連が40億ユーロ、デジタルサービスが12億ユーロ。これに対し、17年9月期のR&D投資は総額52億ユーロで、デジタル事業関連が12億ユーロを占める。さらに18年9月期にはR&D全体で56億ユーロ(約7400億円)以上に増額する計画。14年9月期との比較では40%増の高水準となる。
このうち5億ユーロは会社のコア技術枠として、金属積層造形や自律ロボット、データ分析・人工知能(AI)、製品・製造設備のデジタルシミュレーションが行える「デジタルツイン」といった分野に集中投資する。
一方、16年にリリースしたクラウドベースのIoT(モノのインターネット)向け基本ソフト(OS)「マインドスフィア」では、製造業だけでなく電力、鉄道、ヘルスケア、ビル管理、スマートシティーなどにも広がりを見せる。SAPやマイクロソフトなどに続き、18年1月から米アマゾンウェブサービス(AWS)のクラウドサービスでも提供開始予定だ。
加えて同OSによる顧客の応用ソフト開発をサポートする拠点組織「マインドスフィア・アプリケーション・センター」の展開も進め、現在まで世界20カ所に設置済み。ただ、日本にはまだない。
これについてローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は日刊工業新聞社の取材に対し、「日本では自動車産業をはじめPLM(製品ライフサイクル管理)ソフトで多くの顧客を抱えている。詳しく話せないが、日本に設置する可能性は高い」と前向きに検討していることを明らかにした。
日刊工業新聞2017年12月19日/22日