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クックパッド「料理きろく」の写真抽出精度は98%、次なる進化は?

ディープラーニングや音声アシスタント、開発は社内外で連携も
クックパッド「料理きろく」の写真抽出精度は98%、次なる進化は?

画像分析を中心に研究開発をする菊田エンジニア

 クックパッドは、料理に特化した独自のビッグデータ(大量データ)を活用した新規サービスの立ち上げを急いでいる。2016年に先端技術の活用に力を入れる「研究開発部」を設置した。第1弾として、料理画像判別技術を活用したサービス「料理きろく」を始めた。今後、さまざまな最先端技術を活用した新たなサービスを作っていく方針だ。

クックパッドは、料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」を提供する。現在のレシピ投稿数は270万品(17年10月時点)を超え、日本国内では、月間約6000万人が利用する。今後の経営方針を検討する際に、サービス充実に生かそうと考えたのが、ビッグデータや機械学習の活用だ。

 まず目をつけたのはデータが大量にあり、技術が世界的に発展している画像分析だ。同部で画像分析を中心に研究開発をする菊田遥平エンジニアは「料理の画像分析にあたり、料理か料理じゃないかを見分けるにはルールベースや特徴からの機械学習では困難。大量のデータがある当社だからこそなせるディープラーニング(深層学習)を活用し、画像データの判別を試みた」と話す。

 こうしてリリースされた「料理きろく」は、食事の際に料理を撮影しておけば自動でカレンダーに食べたものを写真記録するサービス。

 大量に撮影しても利用者のスマートフォンに保存された画像データから、料理写真のみを抽出し、的確にメニューを記録する。

 栄養管理や献立を考えるのにも役立つ。現在同サービスで登録された写真数は1000万枚を超える。料理写真の抽出精度は98%、再現率は96%に達する精度を記録した(17年8月4日時点)。

 料理きろくは、同時にユーザーがよく見たレシピが記録されることで、参考にした料理が分かるなど日々進化を遂げている。現在同部の規模は10人ほど。菊田エンジニアは「規模が大きすぎないからこそ、個人の興味で開発が可能だ」と話す。

 今後は音声アシスタント機能なども導入を検討していくという。エンジニアが社内の半分という同社内でも、まだ、先端分野に詳しいエンジニアは少ないという。そのため同部は定期的に社内、時には社外へもイベントなどを通して知見を共有する場を提供している。

 社外向けにアカデミアの貢献のため、17年1―3月に応募をした料理関連の画像認識アルゴリズムを作成する「第1回AIチャレンジコンテスト」(人工知能技術戦略会議等主催)では、同社が画像データを提供した。

 その他にもエンジニアブログの更新や同社主催の勉強会の開催、国立情報学研究所への研究用途向けにレシピや献立に関するデータ公開などを率先して行い、「料理に関する研究が促進されれば」(菊田エンジニア)と効果の期待を示す。

 料理とテクノロジーの追求で、新たな市場を生み出そうとしている。
料理きろく アンドロイド画面例

(文=大串菜月)
日刊工業新聞2017年12月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 クックパッドの17年度上期は減収減益で、プレミアム会員も減少に転じた。グーグルなどもレシピ検索に力を入れており、クックパッドの成長性に懐疑的になる人は多い。  今年、実質経営トップに復帰した創業者の佐野氏。佐野さんは以前、こんな話をしていた。「ある程度利益が出始めて、お金を使って事業を進めることができるようになってから、またこれはハードルがすごく上がるんです。要するに環境を作ったりするわけですよ。我が社の置かれている状況って、ものすごい恵まれた環境だと思いますよ。もっと楽しみたいために、新しい事業をやったりとか。だけど、なかなか生まれない。なかなか生まれないんですよ。お金が無い時は、頭を使うし。経営で大事なことは。『やらないことを決める』ことなんです。結局、競争力だって『しぼる』ことなんです」  佐野氏の原点回帰路線はどう結実するか。

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