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主力のポンプが苦戦。荏原は当面、半導体装置がけん引する?

「投資もまだまだ続く。この3年は大きな下振れはない」(前田社長)
主力のポンプが苦戦。荏原は当面、半導体装置がけん引する?

「製品競争力を維持・向上しないと競争に負ける」と前田社長

 荏原は13日、同社従来機に比べて大型の角型基板に対応した半導体実装用メッキ装置「UFP600AS型」を完成、市場投入すると発表した。従来機が持つ高いメッキ処理性能を継承するとともに、基板の四角化・面積拡大による生産性の向上を両立する。プリント基板など角型の基板に多数のシリコンダイを乗せて、半導体パッケージを大量に生産するファンアウト・ウエハーレベルパッケージ(FOWLP)に対応した。

 新型装置では、大型の角型基板の搬送・メッキ処理に対応できる治具機構を開発した。同治具機構を採用することで、高度な撹拌機能などを継承することができ、高いプロセス性能と生産性を大型の角型基板で達成した。価格は非公表。

 半導体実装では高性能化、高密度化の要求が高まっており、大型の角型基板に適用したFOWLP技術が注目されている。荏原は新型装置の投入により、一層のシェア拡大につなげる。

日刊工業新聞2017年12月14日



前田社長インタビュー


 荏原は2019年度を最終年度とする3カ年の新中期経営計画をスタートした。利益体質の改善や最大の売上高規模を誇るポンプ事業の構造改革など、中長期の安定成長に向けて大なたを振るう。前田東一社長に中計の戦略や今後の展望を聞いた。

 ―新中計では売上高5000億円規模に再挑戦します。
 「売上高目標を掲げたが、それよりも収益性や資産効率を重視していく。19年12月期に営業利益率9%以上、投下資本利益率(ROIC)8%以上を目指す。これを達成することが新中計で最も重要な目標となる」

 ―収益性を高めるには、最大の売り上げ規模を持つポンプ事業の改善が不可欠です。
 「国内事業を中心に、構造改革に踏み切った。これまで7万機種あった標準ポンプを7000機種にまで絞った。年間数十台しか出荷のない機種もあり、製品・部品在庫の観点から効率が悪い。機種数の圧縮で、資産回転率の向上や部品在庫の削減など効果が出ている。また、固定費の削減も進める。機種数の削減で生産部門や間接部門の人員を適正化する。余剰人員は半導体製造装置部門など、人員が逼迫(ひっぱく)する部門に数百人規模で配置転換した」

 ―石油・ガスなど資源開発向けが中心のコンプレッサー・タービン事業の状況は。
 「原油価格が50ドル前後で推移しており厳しさは残るが、当社が得意とする石油化学プラント向けなどは、北米や中国で受注案件が出てきている。昨年に比べ市況は少し改善しているが、まだ楽観視はできない。本格的な回復は、18年後半以降になるだろう」

 ―好調な半導体製造装置事業は、利益面で全社を下支えしています。この状況はしばらく続きますか。
 「市場環境は堅調で、半導体メーカーの投資もまだまだ続く。この3年は大きな下振れはないだろう。ただ、半導体業界は顧客が限られるし、装置メーカーに対する技術的要求も納期も非常に厳しい。製品競争力を維持・向上しないと競争に負ける」

 ―新中計ではM&A(合併・買収)向けの投資枠を100億円に設定しました。
 「カスタムポンプやコンプレッサー・タービン事業では、海外アフターサービス拠点の拡大に充てる。標準ポンプでは販売会社がその選択肢となる。自社で一から拠点を整備するよりも、有力な現地企業を買収した方が効果的だ」

日刊工業新聞2017年9月5日



長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
ポンプやコンプレッサー・タービンを主力とする荏原の中で半導体製造装置は異彩を放っている。原油安などを背景に主力事業が苦戦するなか、半導体向け事業は好調を維持している

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