勃興するベトナム「コンビニ」、双日・ミニストップ連合の勝算
アジア資本が群雄割拠、日系各社も拡大路線へ
大手商社の双日がベトナムのコンビニエンスストア事業を本格化している。同社が展開するミニストップの店舗拡大に向けて総菜や弁当など中食分野の商品を製造する工場を立ち上げたほか、これらを保管・配送する4温度帯の物流倉庫を相次いで稼働した。ベトナムでは主要コンビニ7社の店舗が1年前に比べ約3割増の1596店に増加しており、競争を勝ち抜くための体制整備を進めている。
双日は2015年にベトナムのミニストップ運営に参入した。それまでミニストップはベトナム企業と組んで事業を展開していたが、思うように出店が進まずに合弁を解消。その後、新たに設立した運営会社に双日が出資した。
当初、継承した17店舗からスタートしたが、店舗改革を進めながら公共料金の支払いなど日本的なサービスを取り込んで利便性を高め、2年で104店舗まで拡大。伊藤忠商事グループで、日系企業でベトナム店舗数トップのファミリーマートの背中が見えるところまで成長した。今後は18年中に200店、25年までに800店に店舗数を拡大する計画。
同社は店舗拡大に向け、機能の拡充を着々と進めている。総菜などを製造する事業会社「ジャパン・ベスト・フーズ」を立ち上げ、3月に工場を稼働。ミニストップ向けのおにぎりやサンドイッチ、弁当などの製造をスタートした。
ミニストップベトナムの河村憲明副社長は「お菓子や飲料では差別化は難しいが、カウンター周りのフードメニューや、弁当、デザートは差別化につながる」と話す。
商品の独自性を打ち出すことができる総菜や弁当は集客のカギ。ミニストップは利益率の高い総菜や弁当を商品戦略の中心に据え、いち早く投資を実行するなど中食分野を強化した。
ミニストップの店頭には、ジャパン・ベスト・フーズが製造した焼き肉弁当など、日本ならではの商品が並ぶ。毎日早朝に入荷し、夕方にはほとんどなくなるなど、売れ行きも好調だ。
ジャパン・ベスト・フーズの前田恭志副社長は「おにぎりの認知度を上げ、日本食文化を広げたい」と話す。日系のコンビニとして、日本食を前面に打ち出して競争力を高める戦略だ。
また、16年12月には双日とベトナムの物流大手ニュー・ランド、食品卸大手の国分が共同で出資してニュー・ランド・ベトナム・ジャパンを設立。常温、定温、冷蔵、冷凍の4温度帯に対応した物流施設を開設した。
ベトナムは経済成長に伴って消費が拡大しており、ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンの袴田和史副社長は「物流施設で取り扱う商品のほとんどが、国内で消費されるもの」と話す。ベトナムでは冷凍・冷蔵倉庫は少なく、コールドチェーンの整備が遅れている。双日は今後の物流需要も踏まえ、コールドチェーンの構築に先手を打った格好だ。
ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンの物流施設の一部はミニストップが使用している。ここでジャパン・ベスト・フーズが製造した総菜や弁当を低温倉庫で保管し、ルートごとに仕分けてトラックに積み、各店舗に配送。双日ベトナムの舘入博則社長は「コンビニの商品は多品種で細かく、物流はいかに早く、正確に回すかが重要」と話す。ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンはミニストップの事業拡大において重要な機能を担い、今後の店舗拡大のカギを握る。
ホーチミンの中心部にあるミニストップの店舗では、50席ほどのイートインスペースに、客が入れ代わり立ち代わり席を取り、終日満員の状態だ。
近くに大学があるため、店内は常に学生らでにぎわう。ミニストップベトナムの河村副社長は「ベトナムのコンビニ市場は周辺国に比べ、未開拓の状態」と、市場の有望さを強調する。
ベトナムの小売市場は現状、小規模商店が約8割を占める。同国最大の都市であり再開発が進むホーチミンにも中心部に市場が数カ所あり、生鮮食品のほか日用品や衣料品などあらゆるものがそろう。市場はいまでも庶民の生活基盤として機能している。
だが、都市部のホーチミンやハノイでは、若年層を中心にスーパーマーケットやコンビニなどが生活に根付きつつある。こうした市場環境の変化を捉え、各社が相次いでベトナムに参入。15年には500店ほどだったが、2年で3倍に店舗が急増した。
ベトナムのコンビニ市場で最も店舗が多いのは、同国の不動産開発大手ビングループが展開するビンマート+(プラス)。生鮮食品も扱い、いわゆる日本のコンビニとはやや業態が異なるが、地場企業の力もありベトナム全土に798店を展開している。
このほか、香港企業が運営するサークルKが254店、タイ企業が展開するビーズマートが157店、シンガポール系のショップ&ゴーが115店と、アジアの他国資本が続々と参入しているのもベトナムのコンビニ市場の特徴だ。
日系企業の中で先行するのは160店を展開するファミリーマート。同社は現地企業と提携して09年に1号店を出店したが、提携相手の戦略変更にともない13年に提携を解消した経緯がある。
日本で最大手のセブン―イレブンはベトナムで6月に1号店を出店し、現在は10店舗を展開する。後発だが3年で100店の出店を目指す計画だ。
(文=高屋優理)
双日は2015年にベトナムのミニストップ運営に参入した。それまでミニストップはベトナム企業と組んで事業を展開していたが、思うように出店が進まずに合弁を解消。その後、新たに設立した運営会社に双日が出資した。
当初、継承した17店舗からスタートしたが、店舗改革を進めながら公共料金の支払いなど日本的なサービスを取り込んで利便性を高め、2年で104店舗まで拡大。伊藤忠商事グループで、日系企業でベトナム店舗数トップのファミリーマートの背中が見えるところまで成長した。今後は18年中に200店、25年までに800店に店舗数を拡大する計画。
惣菜・弁当、日本食で勝負
同社は店舗拡大に向け、機能の拡充を着々と進めている。総菜などを製造する事業会社「ジャパン・ベスト・フーズ」を立ち上げ、3月に工場を稼働。ミニストップ向けのおにぎりやサンドイッチ、弁当などの製造をスタートした。
ミニストップベトナムの河村憲明副社長は「お菓子や飲料では差別化は難しいが、カウンター周りのフードメニューや、弁当、デザートは差別化につながる」と話す。
商品の独自性を打ち出すことができる総菜や弁当は集客のカギ。ミニストップは利益率の高い総菜や弁当を商品戦略の中心に据え、いち早く投資を実行するなど中食分野を強化した。
ミニストップの店頭には、ジャパン・ベスト・フーズが製造した焼き肉弁当など、日本ならではの商品が並ぶ。毎日早朝に入荷し、夕方にはほとんどなくなるなど、売れ行きも好調だ。
ジャパン・ベスト・フーズの前田恭志副社長は「おにぎりの認知度を上げ、日本食文化を広げたい」と話す。日系のコンビニとして、日本食を前面に打ち出して競争力を高める戦略だ。
また、16年12月には双日とベトナムの物流大手ニュー・ランド、食品卸大手の国分が共同で出資してニュー・ランド・ベトナム・ジャパンを設立。常温、定温、冷蔵、冷凍の4温度帯に対応した物流施設を開設した。
ベトナムは経済成長に伴って消費が拡大しており、ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンの袴田和史副社長は「物流施設で取り扱う商品のほとんどが、国内で消費されるもの」と話す。ベトナムでは冷凍・冷蔵倉庫は少なく、コールドチェーンの整備が遅れている。双日は今後の物流需要も踏まえ、コールドチェーンの構築に先手を打った格好だ。
ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンの物流施設の一部はミニストップが使用している。ここでジャパン・ベスト・フーズが製造した総菜や弁当を低温倉庫で保管し、ルートごとに仕分けてトラックに積み、各店舗に配送。双日ベトナムの舘入博則社長は「コンビニの商品は多品種で細かく、物流はいかに早く、正確に回すかが重要」と話す。ニュー・ランド・ベトナム・ジャパンはミニストップの事業拡大において重要な機能を担い、今後の店舗拡大のカギを握る。
2年で3倍に店舗が急増
ホーチミンの中心部にあるミニストップの店舗では、50席ほどのイートインスペースに、客が入れ代わり立ち代わり席を取り、終日満員の状態だ。
近くに大学があるため、店内は常に学生らでにぎわう。ミニストップベトナムの河村副社長は「ベトナムのコンビニ市場は周辺国に比べ、未開拓の状態」と、市場の有望さを強調する。
ベトナムの小売市場は現状、小規模商店が約8割を占める。同国最大の都市であり再開発が進むホーチミンにも中心部に市場が数カ所あり、生鮮食品のほか日用品や衣料品などあらゆるものがそろう。市場はいまでも庶民の生活基盤として機能している。
だが、都市部のホーチミンやハノイでは、若年層を中心にスーパーマーケットやコンビニなどが生活に根付きつつある。こうした市場環境の変化を捉え、各社が相次いでベトナムに参入。15年には500店ほどだったが、2年で3倍に店舗が急増した。
ベトナムのコンビニ市場で最も店舗が多いのは、同国の不動産開発大手ビングループが展開するビンマート+(プラス)。生鮮食品も扱い、いわゆる日本のコンビニとはやや業態が異なるが、地場企業の力もありベトナム全土に798店を展開している。
このほか、香港企業が運営するサークルKが254店、タイ企業が展開するビーズマートが157店、シンガポール系のショップ&ゴーが115店と、アジアの他国資本が続々と参入しているのもベトナムのコンビニ市場の特徴だ。
日系企業の中で先行するのは160店を展開するファミリーマート。同社は現地企業と提携して09年に1号店を出店したが、提携相手の戦略変更にともない13年に提携を解消した経緯がある。
日本で最大手のセブン―イレブンはベトナムで6月に1号店を出店し、現在は10店舗を展開する。後発だが3年で100店の出店を目指す計画だ。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2017年12月12日