EVをアピールし始めたトヨタの本音はどこにある?

「FCVとEVのいずれもインフラが整備されているとは思わない」

  • 1
  • 17
トヨタのEVコンセプト車「コンセプト―愛i」
 トヨタ自動車が次世代車における電気自動車(EV)の位置付けを微妙に変化させている。ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を電動化の主役としつつ、従来は近距離移動向けとみていたEVの用途も中距離以上に広げる。EVに傾倒した産業政策を進める中国やインドでは2020年頃にEVを投入。世界で巻き起こる「EVシフト」がトヨタの長期戦略にも影響している。

 トヨタは17日に開幕した中国の広州モーターショーで、19年の導入が予定される新エネルギー車(NEV)規制を踏まえ、20年にトヨタブランドのEVを投入すると発表した。また、インドでは50%近いシェアを握るスズキと組み、20年頃のEV投入に向けた検討を始めた。

 ただ、これらは当面の規制対応との意味合いが強い。今夏、トヨタは中国で関係者向けにEVの乗り比べを行う機会を設定した。試乗したトヨタグループのメーカー幹部は「EV自体の性能に違いは見いだせなかった」と話す。

 リチウムイオン電池を搭載する現状のEVは航続距離や充電時間に限界があるほか、モデルごとの走行性能などに違いを出しにくい。インフラ整備も満足でない中、「EVがないとグローバルに車を供給できないからEVを作る」(トヨタ幹部)のが本音だ。

 少ない量産台数でも利益を出すための方策が、マツダやデンソーとともに9月に設立したEVの基本構造を開発する新会社。新会社にはトヨタが9割を出資し、マツダのノウハウも活用して複数車種に使える基本構造を一括企画する。

 トヨタとしての本格的なEVは、20年代前半の実用化を見込む全固体電池の開発を待って投入する方針だ。全固体電池は満充電まで数分間と短く、安全性も高い。

 別のトヨタ幹部は「3分で充電できるなら航続距離は300キロメートル程度でも受け入れられるのでは」と、航続500キロメートル以下の中距離を想定する。

 一方、トヨタはマスマーケット(大衆市場)を勝ち取る戦略として、引き続きHVやプラグインハイブリッド車(PHV)を拡販する方針だ。

 日本では既に販売の約40%がHVだが、世界販売に占める比率はまだ16%程度(17年1―9月期)。今後数年間は特に欧州や中国でHV、PHVの販売拡大を見込む。

 現在はプリウスだけのPHV設定も、複数車種に広げる方針だ。稼働率の高い商用車やバス、航続距離500キロメートル以上の長距離用途は燃料電池車(FCV)を主軸に据える。

 ルロワ副社長は「5―10年後、FCVとEVのいずれもインフラが整備されているとは思わない」と話す。規制対応のためEVを出しつつ、HVやFCV、通常のエンジン車と全方位の開発を進める姿勢に、世界中のどの市場も捨てられないトヨタの難しい立ち位置が表れている。
(文=名古屋・杉本要)

日刊工業新聞2017年11月24日

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

各幹部でもいろいろ本音はあるだろう。ただ現在、トヨタの意思決定プロセスがどのように動いていて、EV戦略のロードマップが企業としてどのように共有されているのかが分からない。企業経営はとても相対的なものだからこそ、一つ一つ具体的なファクトを洗い出し、分析していくことが大切。トヨタのような超大企業であればなおさらのことだ。

関連する記事はこちら

特集