大手商社、ブラジルの穀物事業で苦戦。売却も視野
「勝者がいない」(三井物産社長)
大手商社が展開するブラジルの穀物事業で苦戦が続いている。三井物産はブラジルで穀物の集荷事業などを手がける子会社であるスイスのマルチグレインについて、2017年4―9月期に423億円の損失を計上。17年度中に売却も含めた、抜本的な対策に踏み切る考えを示した。ブラジルの穀物事業では、双日も17年3月期に損失を計上。大手商社は資源価格の回復などで、三井物産も含め4社が18年3月期に最高益を見込むなど、全体の業績は好調だが、ブラジルの穀物事業は出口が見えない状況だ。
三井物産の安永竜夫社長はマルチグレインについて、「いくつかのシナリオを絞り込んでいる状態で、17年度中にけりをつける」と述べた。複数のシナリオには、パートナーとの提携や部分撤退など、事業を継続するものもあるが、売却の可能性も否定していない。
ブラジルの穀物事業のネックは物流だ。インフラ整備が追いついていないブラジルでは、生産コストは低いが、物流コストが高い。集荷の効率も悪く、港湾の稼働率も低いなど、競争力が上がらず、大手商社をはじめ、参入業者が持久戦を繰り広げる状態に陥っていた。安永社長は「参入当時は10社程度だったが、今は50社ほどいて、勝者がいない」と、厳しい状況にある。
大手商社が中国をはじめとした新興国の食料需要拡大を見越し、ブラジルの穀物事業に参入し始めたのは10年ごろから。三井物産は07年に出資したマルチグレインを11年に完全子会社化した。13年には丸紅が穀物大手の米ガビロンを買収し、双日も集荷事業などを展開するブラジルのCGGに出資した。
だが、物流などの構造的な問題や穀物市況、競争環境の悪化に苦しみ、丸紅は15年3月期に約500億円、双日も17年3月期に約82億円の損失を計上。三井物産は16年3月期にも85億円の損失を計上した。止血はしたものの、その後も干ばつによる不作などもあり、赤字と黒字を繰り返す状態にある。
今期は豊作だったものの、市況が低迷し、取り扱い量が減少。ガビロンは17年4―9月期に当期利益は17億円となったが、丸紅は食料部門の通期の当期利益見通しを期初から20億円引き下げた。
ただ、双日はブラジルの穀物市場としての重要性は変わらないとして、事業を継続する方針だ。丸紅も国分文也社長は構造改革に区切りがついたとして、「成長戦略に軸を移す」としている。
(文=高屋優理)
三井物産の安永竜夫社長はマルチグレインについて、「いくつかのシナリオを絞り込んでいる状態で、17年度中にけりをつける」と述べた。複数のシナリオには、パートナーとの提携や部分撤退など、事業を継続するものもあるが、売却の可能性も否定していない。
ブラジルの穀物事業のネックは物流だ。インフラ整備が追いついていないブラジルでは、生産コストは低いが、物流コストが高い。集荷の効率も悪く、港湾の稼働率も低いなど、競争力が上がらず、大手商社をはじめ、参入業者が持久戦を繰り広げる状態に陥っていた。安永社長は「参入当時は10社程度だったが、今は50社ほどいて、勝者がいない」と、厳しい状況にある。
大手商社が中国をはじめとした新興国の食料需要拡大を見越し、ブラジルの穀物事業に参入し始めたのは10年ごろから。三井物産は07年に出資したマルチグレインを11年に完全子会社化した。13年には丸紅が穀物大手の米ガビロンを買収し、双日も集荷事業などを展開するブラジルのCGGに出資した。
だが、物流などの構造的な問題や穀物市況、競争環境の悪化に苦しみ、丸紅は15年3月期に約500億円、双日も17年3月期に約82億円の損失を計上。三井物産は16年3月期にも85億円の損失を計上した。止血はしたものの、その後も干ばつによる不作などもあり、赤字と黒字を繰り返す状態にある。
今期は豊作だったものの、市況が低迷し、取り扱い量が減少。ガビロンは17年4―9月期に当期利益は17億円となったが、丸紅は食料部門の通期の当期利益見通しを期初から20億円引き下げた。
ただ、双日はブラジルの穀物市場としての重要性は変わらないとして、事業を継続する方針だ。丸紅も国分文也社長は構造改革に区切りがついたとして、「成長戦略に軸を移す」としている。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2017年11月16日