明治、乳業と製菓の研究開発機能を集約。その戦略とは?

“出る釘”ではなく“出過ぎた釘”になりなさい

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伊藤裕之取締役常務執行役員
 明治が2018年3月に、乳業部門(神奈川県小田原市)と製菓部門(埼玉県鶴ケ島市)に分かれていた研究所を統合する。新研究所「明治イノベーションセンター(東京都八王子市)」の建物は11月中旬に完成する。同センターには商品開発や食品機能、生産技術、品質科学研究まですべての研究開発機能を集約。伊藤裕之取締役常務執行役員に戦略を聞いた。

―統合の狙いは。

「乳業部門も製菓部門も、それぞれ研究所の“プロの技”がある。よりおいしいとか、より高付加価値などと言っても、消費者から見れば大した違いはなく、価格競争など従来の縛りから逃れられない。研究開発をする人間は目先の話ではなく、より長い視点で見る必要がある」

―具体的に言うと。

「例えば現在、売り上げの柱に育っている高カカオチョコレートは1998年の発売で、20年近く前からある商品だ。それが急に売れ出したのはなぜかというと“健康機能性”の新たな価値を生み出せたことに尽きる。09―11年の経営統合と事業再編で、製菓と乳業部門の研究者が交流する下地ができた」

「高カカオチョコは苦い。製菓部門の発想だと甘いチョコがおいしいとの固定概念にとりつかれ、苦いチョコを客に食べさせる発想は出てこない。チョコは菓子ではない、健康食品なのだと考えれば、新しい視点で売れる」

―従来発想や固定概念を突き破る、新しい発想が必要だと。

「新しい発想は固定的な枠からは出てこない。センター統合を機に研究者と組織の交流競争を、より活発化したい。研究者にとって遠距離まで出かけて打ち合わせをするのは、心理的に壁が大きい。同じ建物内で日常的に行き来し、それぞれの研究内容がわかるようになれば統合効果は自然に生まれる」

―意思疎通も決め手になります。

「研究者同士のオープンスペースと、ガラス張り化を徹底する。研究者は基本的には1人で行う仕事が多い。何かテーマが起きた時にこの分野は彼が得意だとか、短期間でチームが組めるようにしたい。それによって開発期間を短縮できる」

「研究者には“出る釘”ではなく“出過ぎた釘”になりなさいと言ってある。コストや便利さなど従来の価値レベルではなく、消費者がどうしても買いたいと思うような商品を作らないと。小売店から『ぜひ、おたくのあの商品を売らせてほしい』と頼んでくるようになれば理想だ」

日刊工業新聞2017年10月23日

COMMENT

食品は他の業種と比べても商品アイテムが多く、小売り大手の販売支配力もあるためどうしても価格競争になり、商品寿命も短い。しかし外国の大手では、定番商品を何十年も販売している例も多い。圧倒的な商品力を生み出すには中長期的な視点と、基盤研究の技術が不可欠だ。機能性ヨーグルトやチョコレートに続く成長の柱を、新研究所で生み出せるか。 (日刊工業新聞編集局編集委員・嶋田歩)

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