シーメンス・アルストムの鉄道事業統合-日立への影響は?東原社長に聞く

「非常に脅威とみた方がいいが、高度な鉄道システムで差別化できる」

 鉄道車両で世界2位の独シーメンスと同3位の仏アルストムが事業統合を決めた。両者を追いかけグローバル展開を進めていた日立製作所にも影響が出るのは避けられない。自社イベントでイタリア・ミラノを訪問している東原敏昭社長に今後の戦略を聞いた。

 -シーメンスとアルストムの統合会社の売上高は約2兆円(日立は約5000億円)で巨大企業が誕生します。
 「大きな企業体になる。非常に脅威とみた方がいい。事業として車両生産の規模が大きくなるが、もともと車両は高い利益率を出していない。数を増やしたから利益率が2ケタになるわけではない。日立は車両生産だけでなく信号、ICチケット、監視センサーなどOT(制御技術)とIT(情報技術)、そしてプロダクトを組み合わせた高度な鉄道システムを提供することで差別化できる」

 -2020年代前半までに売上高1兆円を目指しています。一方で鉄道部門の収益性は日立全社の中でもまだ低い。
 「18年度でも売上高は6500億円規模なのでM&Aをやらないといけない。世界中の企業と意見交換している。M&Aは日本企業よりもグローバルの視点で考える。収益性は車両生産もIT化でまだ改善できる。さらに車両納入時の価格だけでなく、長期保守など事業全体のライフサイクルで運用コストをいかに下げられるかが重要になる。1兆円時に営業利益率10%は可能とみている」

 -昨年、イタリアの二つの企業を買収しましたが、現時点での買収効果は。
 「想定以上に出ている。車両のアンサルドブレダ(現日立レールイタリア)は、生産面を心配していたが、生産性も高まっており、品質も高い。英国工場がフル稼働などで英国向けも生産している。日本、英国、イタリアの工場は同じプロセスで作っていくことも考えている」

 「アンサルドSTSは信号だけでなく、一括ソリューション提供の実績があり世界で戦える。デンマーク・コペンハーゲンの地下鉄ではアンサルドSTSの列車制御技術と日立のデジタル技術を融合させ、駅に設置されたセンサーから混雑度を可視化し、乗客数を分析する実証を始めている。どこの国でも遅延やセキュリティー、さらには“ラストワンマイル”が重要になるだろう。シングルチケットですべて買える時代に、乗客が最終目的地までどうすれば最短で行けるかまで考えていく。将来は自動運転との連携なども出てくるろう」

 -シーメンス・アルストム連合も脅威ですが、世界最大の車両メーカーである中国中車とIoT基盤で先行する米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、デジタル化で連携する方がより脅威では。
 「確かに4兆円企業の中国中車とGEが組む方が怖い。ただその両者が組んだ場合、どこまで親和性が生まれるか。GEはもともと強いプロダクトがあって、あとからデジタル人材を集めてきた。日立はもともとITの部隊がいてOTにも長い経験と実績があり、1社でデジタルサービスを提供できるのが強みだ。2年前に大きく組織を見直し、IoT基盤の『ルマーダ』は全社での利活用が進み、顧客への認知度も高まってきている」
ミラノのイベントでスピーチする東原社長


日刊工業新聞2017年10月19日

明 豊

明 豊
10月19日
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18日の日立の社会イノベーションフォーラムがミラノであり、取材で現地に来ています。ピストイアの工場にも行ってきました。インタビューは共同取材の形でその中の抜粋です。多くが鉄道事業、それもシーメンス・アルストムの関連。東原さんの回答は想定内ですが、個人的に日立の鉄道事業はグローバルプレーヤーとして大きく飛躍を考えた時、打つ手はそんなに多くないと思っています。

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