“技能者のオリンピック”アブダビで熱戦中!トラブル乗り越え健闘する日本勢 

「技能五輪国際大会」現地リポート

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「メカトロニクス」の佐藤選手(左)と岡野選手(トヨタ紡織)
 世界中の技能者が技量を競う「第44回技能五輪国際大会」で、白熱した戦いが繰り広げられている。同大会は各国選手が国の威信と技能者としての誇りをかけ、持てる技術のすべてをぶつけ合う場だ。ここまで普段通りの実力を発揮できた選手もいれば、会場設備や競技課題の不備といったトラブルに苦しんだ選手も少なくない。日本代表の“若き匠(たくみ)”達を追った。(アブダビ〈UAE〉=長塚崇寛)

「メカトロニクス」一歩リード


 「メカトロニクス」に挑む日本勢は2日目まで減点がなく、安定した試合運びとなった。ライバルの韓国やブラジルには減点対象となるミスがあったようで、一歩リードした格好だ。同種目には岡野祥磨選手(トヨタ紡織)と佐藤健太選手(同)が出場。岡野選手は「例年に比べ課題量が多かったが、2人で協力して臨機応変に対応できた」と自信をのぞかせた。競技2日目の16日には豊田周平トヨタ紡織会長が会場に駆けつけ、「若い社員が世界と戦っているのを見られて感無量だ。大いに期待している」と選手を激励した。

 ニッケル水素電池を駆動源とする移動体を製造する「製造チームチャレンジ」は前回優勝した種目。コースに配置された三つの対象物を回収する走行競技や、製造コストが採点の肝となる。上野祐平選手(デンソー)は「競技は順調に進んでいる。このままいけば金メダルが見えてくる」と強調。2連覇がぐっと近づいた。

 「電子機器組立て」は修理課題などを無難にこなした。勝負のカギは2日目のプログラミング課題。配点も全体の25%と高く、最大のヤマ場となる。強豪の韓国、台湾、ブラジルとトップの座を争う一方、新興勢力のロシアがダークホースとなりそうだ。

 初日から会場設営の遅れや競技向け材料の不足などに見舞われた今大会だが、「産業機械組立て」は2日目まで大きなトラブルがなかった。川添達也選手(デンソー)は「ここまで自分の考えていた工程通りで、内容は悪くなかった」と振り返る。残り課題でミスがなければ、メダル圏内の可能性も大いにある。「試作モデル製作」の髙木真悟選手(トヨタ自動車)も「作業は予定通り。メダルが見えたかもしれない」と笑顔をみせた。

「プラ金型」王者韓国を追う


 「プラスチック金型」は、競技最大の難所である射出成形課題を着実に乗り切った。競技で作成した金型を用い、指定された10回の連続成形に成功。宮坂逸仁選手(セイコーエプソン)は「いくつかミスをしてしまった。3、4日目の課題でどれだけミスを減らせるかがポイント」と気を引き締める。前回王者の韓国にどこまで迫れるかが注目される。

「情報ネットワーク施工」接戦


 7連覇のかかる日本のお家芸「情報ネットワーク施工」は、2日目まで安定的に競技をこなしたものの、最大のライバルである中国が実力をいかんなく発揮。初日に出遅れた韓国も2日目で盛り返した。このため「まだまだ気が抜けない」と関係者はみている。

「CNCフライス盤」中国追撃


 「CNCフライス盤」は2日目の課題のボリュームが想定以上に大きく、完成には至らなかった。今大会、着実に力をつけている中国が「頭一つ抜け出ている」(関係者)という状態。日本や韓国、台湾がその後に続く。剣持光彰選手(トヨタ)は「課題の難易度が非常に高く、各国が苦戦している。気持ちを切り替えて3日の課題をきっちり仕上げる」と中国を追撃する構えだ。
「CNCフライス盤」の剣持選手(トヨタ)

 「車体塗装」は実力国が確実に課題をこなして混戦模様。スピードと正確な技術が勝負の分かれ道となりそう。深見勇斗選手(トヨタ)は「塗装ブースの不具合など外的要因に阻まれた面もあるが、気持ちを新たにして残りの課題に臨みたい」という。3、4日目は得意種目が控えているので、一気に抜け出したい考えだ。

 「機械製図CAD」は初日に課題文の単語の間違いが発覚。正しく設計できないトラブルが発生したが、2日目は課題提出にこぎ着けた。土屋友志選手(ジェイテクト)は「3、4日目もこの調子で落ち着いてやりたい」と話した。

 「自動車工」は前回大会が5課題だったのに対し、今回は8課題に変更された。各課題の持ち時間が短くなり、作業の速さと正確性が勝負の行方を左右する。下原侑也選手(日産自動車)は「思ったようにできている」と手応えを感じているようだ。
「自動車工」の下原選手(日産)

予期せぬトラブル「挽回は自分次第」


 「構造物鉄工」は競技で使用する材料が初日に届かず、波乱の2日目スタートとなった。4日間・22時間の日程を3日でこなさなければならない強行軍となり、選手への影響が懸念される。

 「溶接」は2日目に溶接トーチが破損するトラブルが発生し、作業が中断した。この時間がロスタイムとして認定されるかどうかが懸念される。笠城絢也選手(豊田自動織機)は「普段通りに進められている」と話す。ライバルの中国、韓国、ブラジルも無難に競技をこなしており、勝負は最後の最後までもつれそうだ。

 「電工」競技は初日に材料トラブルがあったものの、課題は想定の範囲内だった。井上大樹選手(九電工)は「本調子ではなかった」とした上で、「3日以降で挽回できるかは自分次第」と追い上げを誓う。
  

  

日刊工業新聞2017年10月18日

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

運営面のトラブルが多いようですが、各選手ともベストを尽くせるよう願います。日本メーカーの不祥事が続いているなか、選手のみなさんが技能の面で日本のレベルの高さを世界に向けて示してくれることを期待します。

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