トヨタのメダリストが伝える「モノ+ガタリ」

名古屋商工会議所が開く小中学生向けモノづくりイベント

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岩崎さん㊧の指導を受けながら、スプーン作りをする児童
 名古屋商工会議所が小中学生にモノづくりの楽しさを伝える「モノ+ガタリ」プロジェクトを始めた。愛知県内の小中学校を舞台に技能五輪メダリストがモノを実際に作る様を披露し、生徒にも体験させる取り組みだ。職人技のすごみがモノづくりへの憧れの気持ちを子供心に芽生えさせている。

 6月21日。名古屋市緑区の名古屋市立緑小学校の図工室に槌打つ響きが鳴り続けた。25人の5年生に取り囲まれる中、凹みがある台座の上に置く円形の金属板に木槌を振るのはトヨタ自動車の板金職人である岩崎良洋さん。板の形状が打たれるごとに丸みを帯びていく様に児童らは目を見張り、感嘆の息を漏らす。

 「どんどん山っぽくなっていくでしょ」―。岩崎さんが手をいったん止め、半球状になった板を掲げると歓声とともに拍手が自然とわき上がった。岩崎さんは2008年の技能五輪国内大会で金メダル、09年のカナダ国際大会で銀メダルをそれぞれ獲得し、現在はトヨタの企業内訓練校「トヨタ工業学園」の技能五輪課で後進の育成に励む。その技のさえが子供心をわしづかみにした。ある児童は「たたくだけで形になっていくのがすごい」と職人芸に感心することしきりだった。

 岩崎さんが講話と実演を終えた後、児童らも自ら木槌を手にとり、板金加工に挑んだ。さじの形をした金属板の先端部分をたたいて凹ませる。時には岩崎さんの指導を受けながら、次々とスプーンを完成させる。喜々として授業を受ける児童らに、岩崎さんは「つくる楽しさを少しでも心にとどめてくれればうれしい」と目を細めた。

 名商のこの出前講座は職人の技術を学校でじかにみせることで、子供たちにその魅力を発信しようという試みだ。基盤産業であるモノづくりで地域を活性化する施策を模索した結果、たどりついたのが技能五輪メダリストの派遣事業だった。これまでに県内小中学校18校から講座を受け付けている。未来のモノづくりの担い手を育む土壌が、愛知県の小中学校で広がりつつある。
(文=名古屋・江刈内雅史)

日刊工業新聞2016年6月30日 中小企業・地域経済面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

モノづくりに限らず、職能を通じて子どもの“原体験”をつくる場は大事。将来、職人にならずとも、仕事をする上で何かしら役に立っていくと思う。

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