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「ピエトロドレッシング」、あの独特の風味を守る番人がいた

「原料一つで味に影響する」
 月に約180万本ものドレッシングを作るピエトロの古賀第一工場(福岡県古賀市)。コンセプトは「工場は大きな厨房(ちゅうぼう)」だ。ドレッシングの香ばしい酸味が漂う現場で製造部門の責任者を務めるのは製造部長の久島武さん(38)。創業者の村田邦彦氏から味の極意を受け継ぐ品質管理の要として、社内で「味の番人」との異名を持つ。

 久島さんは福岡県内の農業高校の食品関連の学科を卒業後に入社した。主原料となるタマネギの選定やカットなどあらゆる工程を経験。人の目や手を重視する現場で腕を磨いてきた。

 現在、ドレッシングの味を左右する素材の吟味や製品の味を確かめる官能検査など品質管理全般を担う。素材にこだわる非加熱処理の製品は味にブレが生じやすい。それだけに自身の味覚を頼りに毎日の確認が欠かせない。

 そんな久島さんには苦い経験がある。仕込みの工程を担当していた際、レシピ通りに問題なく手がけていたが、顧客からクレームの声が届いた。当初は原因が分からず、たどり着いたのが品種改良が進むタマネギだった。辛みの減ったタマネギと調味料とのバランスが崩れたため、気付かないうちに風味に変化が生じていた。消費者の反応は敏感なだけに、「原料一つで味に影響することを学んだ」と振り返る。

 今後の久島さんの大事な役割は「変えないようにおいしくしていかんと」という創業者の教えを伝承すること。守るべきところは守り、新しさを追い求める。そう教える際に気を付けているのは「相手がどう考えているか」ということ。選択肢を示しながら考える習慣を養い、素材や製品と向き合う手作りの醍醐味(だいごみ)を伝えていく。
(文=西部・高田圭介)
日刊工業新聞2017年10月18日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
酸味と野菜の旨味が絶妙なピエトロドレッシング。それにしても、玉ねぎの違いを感じたお客さんはかなりのピエトロファンですね。

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