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学びの秋、「サイエンスカフェ」に行ってみよう!

コーヒーなどを味わいながら、専門家と市民とが、科学を話題に気軽に語り合う
 この10年ほど、「サイエンスカフェ」という催しが、各地で開かれるようになっているのを、ご存じだろうか。サイエンスカフェとは、喫茶室などでコーヒーや紅茶などを味わいながら、科学者・研究者・技術者などの専門家と市民とが、科学を話題に気軽に語り合う催しである。

専門家・市民、対等に議論


 元々1998年に英国のリーズで始まった「カフェシアンティフィーク」が起源とされ、多くの国々に広まった。わが国でも2004年頃から徐々に実施されるようになり、06年4月の科学技術週間に日本学術会議・科学力増進分科会の呼びかけで全国21カ所で開催されてから、全国的に普及するようになった。

 20世紀後半に長足の進歩を遂げた科学・技術は、人々の生活を豊かにした半面、戦争や環境破壊などの負の遺産も生み出した。また一般の人々が科学・技術の進歩の速さについていくことの難しさから、人々が科学・技術への信頼や関心を失っている状況があり、こうした状況が将来を担う若者たちにも波及して、世界中で問題となっていた。

 そういった状況下で、科学者や技術者の間から、「科学・技術を担っている自分たち自身が社会に向かって働きかけ、科学・技術に対する社会のリテラシーを高める努力をすることが不可欠である」との意識が高まってきた。そういった意識の中からサイエンスカフェという試みが生まれたのである。専門家が一般の人々と直接対話し、相互に情報交換をして、双方向のコミュニケーションと共感を成立させること、そしてそこから新しい関係性を創り出すことが重要なので、大きな講演会などとは一線を画している。

先端技術の敷居を低く


 現在、日本各地でそれぞれに、特色あるサイエンスカフェが開催されている。大学や公的機関、企業やNPOなどでのサイエンスカフェも盛んに開かれるようになり、私たちも06年4月から始め、毎月(時に隔月のこともあるが)第3金曜日の18時30分から東京・神保町の冨山房ビル地下1階の喫茶室Folioで、サイエンスカフェを開催している。17年9月で128回(+特別編3回)を数えるが、毎回ボランティアで、科学、技術、文化、芸術、スポーツなど、興味深い話題を提供して下さる専門家の方々と、この催しを楽しみにして下さる老若男女の参加者の方々のご支援のおかげで、まだまだ何年も続きそうな気配である。会場を提供して下さり、毎回テーマに沿ったおいしいお菓子を工夫して提供して下さる冨山房インターナショナルとサロン ド 冨山房Folioの皆さまの温かいご支援の下、参加者の方々のご希望に沿って、200回になるまで楽しい語らいを続けていきたいと考えている。私たちのサイエンスカフェでは、先端的な科学や技術に対する敷居をできるだけ低くし、互いに対等に議論できる関係をつくるためのルールとして、お互いに「〇〇さん」と呼び合うことを決めており、わが国を代表する話題提供者の方々も、その雰囲気を楽しんで下さっている。

全国各地で活発な開催


 これまでの話題提供者とテーマや様子については、冨山房インターナショナルのホームページ(http://www.fuzambo-intl.com/?main_page=page&id=1)を参照されたい。また、さまざまな団体によるサイエンスカフェの情報の一部は、科学技術振興機構のサイト(https://scienceportal.jst.go.jp/events/events.php)に掲載されているので、参考にされたい。
 読者の方々の中で、私たちのサイエンスカフェに参加してみようかとお思いの方がいらっしゃれば、Folioまでご連絡いただきたい。多くの方に各地で開催されているサイエンスカフェに参加されて、専門家や他の参加者たちとの対話を楽しんでいただきたいと思っている。私たちのサイエンスカフェの様子をまとめた「サイエンスカフェにようこそ!」シリーズが冨山房インターナショナルから出版されていることも、併せて紹介させていただく。
(文=お茶の水女子大学学長・室伏きみ子)

【略歴】むろふし・きみこ 70年(昭45)お茶の水女子大卒。76年東大大学院医学系研究科博士課程修了。医学博士。お茶の水女子大理学部長、副学長を経て15年学長。政府関係の公職やブリヂストン社外取締役などを歴任。埼玉県出身、70歳。
日刊工業新聞2017年10月9日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ノーベル賞が次々に発表されている昨今。科学に興味を持ってイベントに参加してみるのはいかがでしょうか。

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