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1kg1000円の味噌が最も売れる"みそカフェ”効果

茨城・内山味噌店、新しい楽しみ方提案。次はスイーツを全国展開へ
1kg1000円の味噌が最も売れる"みそカフェ”効果

「cafe Mizukinosho」は現代風の内装で女性客を中心に人気

 みその専門業者がカフェを経営―。そんなユニークな取り組みを進め、地域で存在感を高めている内山味噌店(茨城県日立市、内山庄栄社長、0294・52・2223)。みそ自体の製造・販売を行うだけでなく、みそ料理を振る舞う飲食店の運営、みそを使ったオリジナル商品の開発などに乗り出している。

 本社敷地内の直売店「味噌蔵みずきの庄」の隣に、カフェ「cafe Mizukinosho」をオープンしたのは2006年。メニューはカレーやオムライス、ハンバーグなど洋風の料理が基本だ。

 内山社長は「みそのイメージと異なる料理を出すことで、調味料としてのみそのおいしさや生かし方を客に気付いてもらうのが狙い」と説明する。内装もモダンな雰囲気でおしゃれさを打ち出し、女性客を中心に好評を得ている。

「売ろうとするのではなく、魅力を知ってもらう」


 カフェ経営に乗り出したきっかけは、みそをそのままの状態で売るだけのやり方に限界を感じたからだった。

 95年、小売店への卸だけの状況から一般消費者に直接販売できるようにするため、直売店を本社敷地内に立ち上げた。だが、装置を使わず昔ながらの醸造方法を採用した結果、コストが増加。

 一方で、そうした製造法を求める熱心なファンは地域レベルでは少なく、売り上げは一時期2500万円と現在の5分の1にまで落ち込んだ。危機的状況の中で内山社長は腹をくくり「みそを売ろうとするのではなく、みその魅力を知ってもらうという方針に切り替えた」。

 みそを使った料理の提供という戦略は功を奏した。みそは通常スーパーでは1キログラム400円ほどが主流だが、内山味噌店の直売店では、地域の大豆を使うなど原料にもこだわった約1000円のみそが最もよく売れるという。

(直売店でみそプリンなどのみそスイーツを販売)

みそ業者は競合しない。スイーツをOEMで


 「カフェを開くからには、名物となるスイーツをつくりたい」(内山社長)と考えて生み出したのが「みそプリン」だ。みそ特有の甘辛さやまろやかさがプリンとうまくマッチしている。風味はプリン本来の香りが前面に出ている一方、通常のプリンよりも食感がクリーミーで後を引く。

 最初はカフェのデザートとしてだけの提供だったが、好評のため持ち帰り・土産用に商品化し、みずきの庄の直売店とオンラインショップで販売している。

 最近では、みそをつくる際に使う米麹(こうじ)を用いて甘酒の製造・販売にも乗りだしたほか、「甘酒プリン」を製品ラインアップに追加した。甘酒の15年度売り上げは550万円。16年度には1500万円にまで引き上げたい考えだ。

 みそ業界での、みそスイーツ製造では同社は先駆的存在。みそは発酵食品のため菌の扱いが難しく、スイーツ製造に参入したくてもできないみそ業者は少なくないという。

 内山味噌店は、そうした企業に対して今後、みそスイーツのOEMを担いたいと考えている。内山社長は「販売エリアが地域で分かれているみそ業者同士は競合しない。設備も他社のニーズもあり、当社はきっと力になれるはずだ」と力を込める。
(文=茨城・大原翔)
日刊工業新聞2016年9月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
価値を上げていくマーケティングとしては素晴らしい。スペインの美食の街・バスクも食のオープンイノベーションで好循環を生み出している。職人さんの技術や腕を開放することでいろいろなビジネスが生まれるはず。

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