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「センチュリー」2代目の開発者が20年前に考えていたこと

「センチュリー」2代目の開発者が20年前に考えていたこと

2代目「センチュリー」(GAZOO公式サイトより)

 トヨタ自動車は5日、21年ぶりに全面改良して2018年半ばに発売する最高級車「センチュリー」のプロトタイプモデル(写真)を、27日に東京・有明の東京ビッグサイトで開幕する「第45回東京モーターショー」で初公開すると発表した。V型8気筒で排気量5000ccのハイブリッドシステムを新たに搭載。先進技術も装備し、快適な乗り心地と燃費性能を追求した。

 センチュリーの全面改良は1997年4月以来で、新型は3代目となる。ハイブリッド車(HV)を設定するのは初めて。バッテリーはニッケル水素を採用する。全長は5335ミリ×全幅は1930ミリ×全高は1505ミリメートル。ホイールベースは3090ミリメートル。

 外観はグリルなどに七宝文様を施し、格調高く重厚感のあるデザインにした。タッチ式液晶パネルでシートや空調などの集中操作ができる。衝突回避支援システムも採用。シート表皮は100%ウールのファブリック仕様と本革仕様を設けた。
「センチュリー」のプロトタイプモデル

日刊工業新聞2017年10月6日



「セルシオ」と比べハード面が劣っている


<トヨタ自動車第一開発センター野口満之氏(当時)>
 トヨタのフラッグシップサルーンとして30年ぶりのモデルチェンジ。旧モデルはVIPカーとしての評価は非常に高いが、さすがに設計が古く、サスペンション、エンジンの非力さなどが気になりだした。

 とくに89年に発表した「セルシオ」と比べ、“格”が違うセンチュリーの方がハード面が劣っている。このためトヨタの最新、最高の技術を投入した。設計にはVIP付き運転手や秘書の声を反映した。

 その結果、海外要人が乗っても違和感のない室内高や、“額縁”に当たる後部窓枠にアルミ材を使用し、VIPのテレビ映りまで気を配った。外観、内装とも職人の手作業が多く、工芸品的な仕上げだ。さまざまな最新技術を投入したが、この車に関しては個々の技術より、車の背景にある価値を見いだしてほしい。

 「新技術」この車の性格上、故障で走行途中に止まることは絶対に避けなければならない。このため、燃料ポンプは二個備え、常に切り替えて使用、電子スロットルやEFIコンピューターなど電子制御を左右6気筒ごとに独立させ、国産車で初めて万一の場合、片側6気筒での運転を可能にした。

 エアバッグは運転席と助手席に加え、前後両方のサイドエアバッグを装備、さらに助手席には乗員検知センサーを搭載し、助手席に人が乗っているかどうかを判断、非乗車時は衝突しても助手席エアバッグは開かず無用の修理を防ぐ。

 運転手と、助手席の秘書、後部席のVIPの二人とは車内にいる時間は異なることから、運転席だけ独立してエアコンの温度制御を可能にした。GPSボイスナビやCD、テレビ、FM文字多重放送などのマルチメディア機器を充実し、これらは後部席での操作が可能。さらに後部席には、ドアを開けるとシートが後退するシートスライドやシートバイブレーター、シートヒーターなどを装備した。

 助手席は秘書が振り向きやすいようなシート形状とした。「販売」価格は925万円から987万円。扱いはトヨタ店で、月販目標は200台。新聞、雑誌には広告を出すが、テレビCMは一切行わない。

 「エンジン」国内メーカー初のV型12気筒エンジンを開発。排気量は5000ccながら燃費は10・15モードで7.2キロメートルと、従来の4000ccエンジンより13%向上させ、地球環境に配慮した。

 圧縮比10.5と高い熱効率を確保し、連続可変バルブタイミング機構の採用などで高燃費を実現。最高出力は280馬力(5200回転時)、最大トルクは49キログラム(4000回転時)。アクセルコントロールはノーマルモード、加速が必要なパワーモード、滑りやすい路面でのスノーモードに切り替えられる。

日刊工業新聞1997年5月14日


明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
20年前、日刊工業新聞に掲載された開発者の方の記事を見つけました。「『セルシオ』と比べ、“格”が違うセンチュリーの方がハード面が劣っている」というコメントが印象的。日本の乗用車では初めてとなるV12エンジンが搭載され、名実ともに世界でもトップクラスの高級車に仲間入りを果たした。この20年間で経営者トップの社長車に対する考えも随分変わり、国内で「レクサス」ブランドが根付いた。「センチュリー」はこれから孤高の道を歩むのだろうか。

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