今こそ「経営騎士道」と「スーパーオプチミスト」

関経連会長が語る「経営者に求められるもの」

松本会長
 英国の思想家で歴史家のトーマス・カーライルが『過去と現在』で説いたように、経営者は、営利至上主義を排し、人間愛をベースとするいわゆる「経営騎士道」を頭の片隅に置く必要がある。私心なく社会に尽くすのが真のリーダーであり、それこそがエリートと言えるだろう。自由主義経済のなか、企業間で競争するのは当然であるが、一方で社会に貢献するという気持ちを忘れてはならない。

 感銘を受けた文章がある。1938(昭13)年、物理学者で冶金(やきん)学者の本多光太郎先生の東北大学発のベンチャー企業(現トーキン)の開所式でのあいさつだ。

 住友グループの経営に関する伝統的精神を「国家的で奉仕的」であるとし、経営者が人格者として工業道徳に重点を置き、社員を指導すれば「上下同心一体となり、良品を安価に製造し得るに至る」と発言されている。

 さらに「いくら技能があっても、工業道徳がなければ、優良な工業品を作ることはできない」とも話されている。今の経営者が忘れていることを指摘されている。

 私は社会全体の利益を考える公益資本主義に賛成だ。100年以上続く企業が日本には2万7000社以上あり、世界で200年以上続く企業の40%以上が日本にあると聞く。

 日本の企業には公益資本主義的な考え方が残っている。熟考され風雪に耐えた事業精神は、ステークホルダー(利害関係者)にも十分理解され、利益が公平に分配される経営が持続的に実践される。

 結果、長寿企業が多いのではないか。社会環境の変化へのスピーディーな対応や資金調達の慎重な判断、運営などが企業永続の条件といわれる。これらは日本の長寿企業が実践してきたことだ。

 戦後、日本は米国に次ぐ世界2位の経済大国になった。“負けてなるものか”という戦中の方々がその当時、部長や課長として、日本に奇跡を起こした。その要因は終身雇用、年功序列制度、企業内組合などにあっただろう。

 しかし、一番の要因は、彼らがスーパーオプチミスト(超楽観主義者)だったことだ。戦争で壊滅状態になったが、その後20年で経済大国になる。

 絶望の中で夢を抱き、信念で実現したのは、彼らだ。彼らが日本を押し上げたのであり、我々は彼らの後に続いたに過ぎない。明治時代もそうだったのだろう。経営者には彼らのような考えが必要だ。
【略歴】
松本正義(まつもと・まさよし)67年(昭42)一橋大法卒、同年住友電気工業入社。04年社長、17年会長。11年関経連副会長。兵庫県出身、73歳。

日刊工業新聞2017年9月28日「広角」より

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

文中で指摘のある「スーパーオプチミスト(超楽観主義者)」。経済の先行き不透明さが一層高まるなか、こうした考えを持つ経営者が果たしてどれぐらいいるのか、心配だ。

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