携帯大手の攻勢、格安スマホ業者を淘汰に追い込む

「同じように戦っても勝てない」(LINEモバイル)

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「フリーテル」は広告活動を積極的に展開したが、うまく投資回収できなかった(プラスワン・マーケティング提供)
 格安スマートフォン業界の優勝劣敗が鮮明になり始めた。原因は二つ。格安スマホ事業者の乱立と、携帯大手による安値攻勢だ。業界大手の楽天はこの流れを察知し、契約数で伸び悩む「フリーテル」の買収を決めた。格安スマホ業界では初のM&A(合併・買収)となる。契約者の獲得に苦戦する他の格安スマホ事業者は市場環境の厳しさに悲鳴を上げており、淘汰(とうた)の波が広がりそうだ。

 「ほとんどの格安スマホが契約者を獲得できなくなっている」―。今夏、スマホ業界では、こんな噂(うわさ)が広がった。背景には、相次ぐ新規参入に伴う競争激化に加え、携帯大手の低価格ブランドや割安プランによる格安スマホ包囲網がある。

 フリーテルを展開するプラスワン・マーケティング(東京都港区)は、この攻勢をもろに受けた。プラスワンの関係者は「格安スマホ市場の競争は激しい。

 その中で既存の顧客に安定したサービスを提供し続けるため、大手の楽天に事業を引き継ぐことを決めた」と売却理由を打ち明ける。フリーテル事業を切り離し、もう一つの主力である端末の製造・販売事業に専念する方向に舵(かじ)を切った。

フリーテルは独自端末を武器に展開し、市場でも注目された存在だった。顧客からも端末を評価され、一定のシェアを獲得していた。ただ、競争環境の激化などに伴い、直近では契約者の獲得に苦戦し、赤字が続いていたようだ。シェアも少しずつ低下しており、最後は事業売却を迫られた。

こうした優勝劣敗の様相は、格安スマホ市場全体に広がりつつある。特に販売現場では、その兆しが見え始めている。

 格安スマホ事業は認知度の向上や顧客接点の拡大を図る施策として、家電量販店などへの出店が大きなトレンドだった。だが、ここ数カ月、撤退する動きも目立つ。

 ヨドバシカメラ(東京都新宿区)の担当者は「契約の多い業者は出店がさらに増え、少ない業者は出店を絞る傾向が出ている」と明かす。店舗の運営には大きなコストがかかるため、店舗の維持は体力の有無を測る試金石になっている。

 競争激化の要因は、異業種からの相次ぐ参入だけではない。顧客の流出を防ごうとする携帯大手の攻勢が大きな圧力になっている。

 特に大手傘下の低価格ブランド「ワイモバイル」や「UQモバイル」が豊富な店舗網などを生かして市場を席巻。価格競争力が高いはずの格安スマホ事業者が劣勢に立たされている。後発ながらシェアを伸ばしているLINEモバイル(東京都新宿区)の嘉戸彩乃社長も「(携帯大手傘下の低価格ブランドと)同じように戦っても勝てない」とため息を漏らす。

 さらに足元では、携帯大手のメーンブランドが割安な新プランを相次いで発表した。NTTドコモは毎月の利用料を1500円割り引く「ドコモウィズ」を6月に投入。KDDIは7月、月1980円から利用できる「ピタットプラン」を始めた。業界内では、6月ごろから格安スマホ契約数の伸びが鈍化していると囁(ささや)かれる。

 IT調査会社のMM総研(東京都港区)の横田英明常務は「本来は格安スマホに流入するはずだった顧客が、携帯大手の割安プランに流れている」と指摘する。

 まだ格安スマホは、ITリテラシー(活用能力)の高い層から一般層に普及し始めた段階。一方で携帯大手のブランドには安心感がある。格安スマホと価格差があまりないようであれば当然、携帯大手の割安プランを選ぶというわけだ。

 格安スマホ市場は急成長し、利用者はスマホ全体の1割程度にまで達した。ただ、携帯大手の攻勢などにさらされ、市場は曲がり角にきている。
                

(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年9月28日

COMMENT

MM総研の横田常務は「格安スマホ事業者は体力のあるなしで二極化している。中位以下は厳しい。1社が動くことで、撤退が相次ぐ可能性はある」と今後の市場動向を見通す。ある格安スマホ事業者は「正直言って、競争環境は非常に厳しい」と漏らし、今後の撤退の可能性を否定しない。楽天によるフリーテル買収は業界再編が一気に進む契機になりそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

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