ダイソン、EV参入。電池でもイノベーションが加速するか

トヨタも開発を進める「全固体電池」採用へ

ジェームズダイソン財団公式ページより
 電気自動車(EV)の開発を開始したこと発表した英ダイソン。2020年の発売開始を目指し、開発に20億ボンド(約2900億円)以上の投資を行なう。家電で培ったモーターや電池などの技術を活用する。EV開発では大手自動車メーカーが競っているが、異業種参入で競争はさらに激しくなりそうだ。

 創業者であるジェームズ・ダイソン氏が従業員に宛てたメールで明らかにした。すでに社員や自動車業界の専門家ら400人以上が開発に携わっており、今後も人員を増やすという。

 ダイソン氏は同社が開発するEVについて、テスラなどの自動車メーカーが設計しているものとは「根本的に異なる」ものになると説明。「他社と同じように見えるものでは意味がない。スポーツカーではなく、非常に安い車でもない」と話している。電池は、充電が容易でリサイクルもしやすいといわれる全固体電池を使用する。

 自動車業界では排ガスを出さないEVの開発競争が加速。英政府もEV産業を育成し、欧州連合(EU)離脱後の経済の柱としたい考え。40年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を打ち出している。

トヨタVSテスラ


 フランスや英国が2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出し、電気自動車(EV)に強い追い風が吹いている。とりわけ巨大市場である中国がEV優遇策をとっていることから、EVの中核部品であるリチウムイオン電池の需要は高い伸びが期待される。

 その一方で、リチウムイオン電池の競争は激しさを増すばかり。NECが同事業からの撤退を決断し、日産自動車もNECとの共同出資会社オートモーティブエナジーサプライ(AESC)の売却について中国企業と協議中とされる。ソニーもスマートフォン、タブレットなどに使われるリチウムイオン電池の事業を村田製作所に売却している。

 現状でEVの航続距離や安全性の面で最大のネックとされるのが電池。トヨタ自動車はリチウムイオン電池より容量が大きく安全性も高い全固体電池のEVを開発中とされ、その件について先日、米テスラのイーロン・マスクCEOが実現性に疑問を示す発言をした。ちなみにテスラのEVはパナソニックの電池を採用し、かつてのトヨタの提携先でもある。

 リチウムイオン電池では、サムスンSDI、パナソニック、LG化学が現在の3強だが、バッテリーで技術革新が起きれば業界地図ががらり塗り替わる可能性もある。それまでは再編や淘汰が進みそうな気配だ。

新材料も


 東京工業大学物質理工学院応用化学系の菅野了次教授らは、固体中をイオンがあたかも液体のように動き回る「超イオン導電特性」を持つ、固体電解質材料を発見した。電池の構成部材である正極、電解質、負極をすべて固体で構成した「全固体リチウムイオン電池」(全固体電池)の実用化につながる可能性がある。成果は14日、米化学会学術誌ケミストリー・オブ・マテリアルズに掲載された。

 研究グループはスズやシリコン、リン、リチウムの割合を変えることで、電池にした場合に流せる電流の大きさや、充電速度に関わる「イオン伝導率」の高い層を発見。その材料はスズとケイ素を組み合わせて組成されるため、安価かつ汎用的だ。また合成しやすく、熱安定性が高い利点がある。

 菅野教授は「全固体電池の原料費を3分の1程度にできる可能性がある」としている。

 これまで発見された固体電解質は、レアメタル(希少金属)であるゲルマニウムが必要なほか、電気的安定性などが課題だった。

 構成部材のすべてが固体の全固体電池では、電解質をチップなどにすることで、従来よりも電池を小型かつ大容量化できると期待されている。

日刊工業新聞第2017年7月14日



界面の接合強度を克服へ


 産業技術総合研究所先進コーティング技術研究センターの片岡邦光主任研究員らは1日、材料に酸化物の単結晶を使い、電池内部でショートが発生しづらい「全固体リチウム二次電池」を開発したと発表した。1平方センチメートル当たり10ミリアンぺアを流してもショートしなかった。医療機器に使うバッテリーなどへの応用が期待できる。企業と連携し、2020年頃までの実用化を目指す。

 従来品は1平方センチメートル当たり0・6ミリ―0・8ミリアンぺアでショートしていた。片岡主任研究員は「大型単結晶固体電解質の育成に、世界で初めて成功した。さらに、世界最高のリチウムイオン導電率を達成した」と述べた。

 研究グループは、酸化物系の固体電解質材料「ガーネット型酸化物」を、従来の10倍程度のリチウムイオン導電率を持つ単結晶に合成。ショートの原因となる現象「デンドライト」の発生を防いだ。さらに微粒子をガスと混合して基板に噴射し、電極と電解質を接合した。リチウムイオン導電率や電極と固体電解質の界面の接合強度に課題があった。

 リチウム二次電池は携帯電話やノートパソコンなどのバッテリーとして広く使われる。しかし、可燃性の有機電解液を使うため発煙や発火事故の危険性がある。一方、不燃性の材料「無機固体電解質」を使う全固体リチウム二次電池は、そうした懸念が少ない。

日刊工業新聞2017年2月2日

COMMENT

土田智憲
かねひろ

空気力学を強みに、既成の形に捉われない再発明をしてきたダイソンが提案する車がどんなものになるのか、とても興味が湧きます。車を足がかりに、飛行機産業にも進出してきたら面白いですね。

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