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ゲーム制作会社の外部委託、進む「内外分業」の先に見据えるもの

統計からを窺えるグローバル志向
ゲーム制作会社の外部委託、進む「内外分業」の先に見据えるもの

ソニーはプレイステーションVRでゲームやそれ以外の新たな市場創出を狙う

 9月21日から東京ゲームショウ2017が開催されている。ゲームは、COOL JAPANの代表的なコンテンツ。そこで、今回は、情報通信業基本調査(注)から、日本の代表的なコンテンツビジネスであるゲーム産業を支えるゲーム制作会社の実像に迫るデータを整理し、そのビジネスが、市場面でも技術面でも「グローバル志向」であることを明らかにしていこうと思う。

 下のグラフは、ゲームソフトウェア制作会社(以下、ゲーム会社)の1社平均自社開発コンテンツ数(棒グラフ)と1社平均売上高(折れ線グラフ)の推移である。
                  
 
 自社開発コンテンツ数の推移を見ると、2011年度に顕著に増加した後は下落傾向にあることがわかる。2015年度には約8作品と、2011年度の約16作品から半減した。

 これに対して売上高は、2011年度以降趨勢的に増加しており、2015年度には約100億円と、2011年度の約50億円からほぼ倍増している。作品数は半減しているのに売上高が倍増しているということは、1作品あたりの平均単価が上昇している、すなわち、この5年でどんどんと大作化していることを意味する。
               
   
 次に、業界構造を見るために、ゲーム会社の外部委託に関するデータを見てみよう。ゲーム業界では、約9割の会社が外部委託を行っている。

 上のグラフは、ゲーム会社の外部委託率を、作品本数ベースと金額ベースで示したものだ。ゲーム会社の本数ベースの委託率は増加傾向にあり、2015年度には自社開発コンテンツ数の約4倍にまで達している。

 しかし、金額ベースでは横ばいの傾向で、売上高に占める割合は3割程度に過ぎない。これは、委託業務1件あたりの規模が小さいことを意味している。

 これらのことから、ゲーム業界は、コア企業が工程を細分化して外部に発注し、納品された部分を統合して開発ゲームとしており、コア企業を頂点としたピラミッド構造があることが窺える。
           

 さらに、外部委託のデータからわかることがある。左上のグラフは、外部委託金額を国内外別に表したものだ。2012年度に海外への委託が急増していることがわかる。右上の棒グラフは、「関係会社」への外部委託金額を国内外別に表したもので、折れ線グラフは外部委託金額に占める「関係会社」の割合。

 折れ線グラフを見ると、ゲーム会社が関係会社に委託する割合は2015年度で約1/4と高くはない。また、国内外の別を見ると、海外の関係会社が2/3程度を占めている。すなわち、ゲーム会社はスポット的な委託が多く、安定した委託は海外関係会社に行うという内外分業型であると言える。
                 

 最後に、ゲーム会社は事業展開についてどのような構想を持っているのだろうか。ゲーム会社では、「海外への事業展開」について、既に行っており現状を維持するか、今後拡大させるか、または今後新規に行う予定があるか検討中という回答が8割近くに及んでおり、海外という直接市場の拡大への関心が高いことがわかる。

 また、海外(特に関係会社)への委託率が増加していることから、「海外への外部委託」への関心が高いという結果も納得できるかと思う。

 その次に関心が高いのは、大学という社会資源を利用した技術向上。海外委託には、高いゲーム制作技術の獲得という目的もあると考えられ、技術の獲得を事業展開上の課題と認識している様子が窺える。

 このように、日本の代表的コンテンツビジネスであるゲーム業界は、市場面でも技術面でも「グローバル志向」であると言える。
Nintendo Switch(ユーチューブ公式動画より)

(注)ゲーム会社とアニメ会社については、当該事業に属する事業所を有する企業のうち、資本金額又は出資金額3,000 万円以上の企業を調査対象としています。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ソニーの「PS4」と任天堂の「スイッチ」。日本の誇るゲームプラットフォームだが、それぞれビジネスモデルが違う。この2社が今後どういう戦略をとるか、興味が尽きない。「VR」や「AR」の登場でゲーム産業の構造がどう変わっていくかも注目。

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