私立大学の「自助努力」に水を差す?東京23区内での定員増抑制

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**公的支援薄く
 改革にひた走る国立大学。一方、私立大学は公的支援が薄く、収入における学生納付金比率が高い。それだけに、私立大は自助努力を強く意識してきた。企業ニーズをくみ取った産学連携や、学生や社会のニーズに応える魅力的な新学部・学科を設置し、学生減少という逆風をはね返す。

 慶応義塾大学は研究費や奨学金に使える3号基本金を「現在の650億円から約40年後に1000億円に」との大目標を掲げる。もともと医学系研究に強い慶大は政府の目的志向型の競争的資金などを多く活用しており、研究費における自己資金比率は4%と他の大学より低い傾向にある。長谷山彰学長は「時間をかけた思考や長期的な交流が重要な研究を大切にするため、この自己資金比率を高めたい」と強調する。

外部資金狙う


 早稲田大学では、産学連携の大型化のチャンスをとらえ、新研究開発センターを2020年に開設する。スマートグリッド(次世代電力網)や次世代自動車など、国の事業で立ち上げた産学コンソーシアムを土台に、産業界からの資金を増やす狙いだ。

 医学部がない早大の場合、理系教員比率は全体の3割。産学連携による外部資金を増やしにくい環境にある。

 それでも中長期計画「早稲田ビジョン150」によって、外部研究費収入を12年に約90億円、15年に約110億円と伸ばしてきた。32年には年間収入1000億円のうち外部研究費収入を200億円とする計画。「トップクラスの国立大学と同様に、産学連携で2割を獲得する」(石山敦士理事)ことを目指す。

物議醸す規制


 人口減少を受け、学生納付金比率が高い私立大学経営の未来は、明るいとはいえない。そんな中、物議を醸しているのが、東京23区内での私立大学の定員増抑制という政府方針だ。

 政府の狙いは人口の東京一極集中の是正だが、日本私立大学連盟(私大連)は「私立大が新規分野の人材育成を禁止するのに等しい」と反対意見を公表した。

 就職に適した産業が地方になければ、学生は流出する。だから規制は的外れだとする指摘は都心以外の大学からも相次ぐ。吉田美喜夫立命館大学学長も「県レベルで就職協力協定を結び、地域企業のインターンシップ(就業体験)を学生に紹介する活動を、多くの私立大で行っている」と、地方を重視している姿勢を説明する。

 大学の生き残り策は、国立と私立、都市部と地方といった区分けでは単純には論じられなくなってきた。大学が幅広い多様性で競い合う、そんな時代に突入している。
(編集委員・山本佳世子が担当しました)

日刊工業新聞2017年9月22日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

国公立大学より格段に数が多く、人づくりの志もさまざまなのが私立大学だ。その多様性は、政府の規制が少ないことによる効果であり、同時に「規制を強化をすべき」との声が出てきやすい環境要因でもある。 経営難や不祥事につながる不適切な大学をなくす工夫は必要だが、効果が不確かなのに各大学の手足を過剰にしばることに対しては、国は慎重であってほしい。

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