世界での競争力が問われる「指定国立大」

規制緩和で自由・自律経営が求められる

明確に別扱い


 国内には86の国立大学があり、これまで基本は同列の扱いだった。だが、トップ層を明確に別扱いする新制度が2017年度に始まった。

 文部科学省は各大学の産学連携などの実績数値で判断した上で「指定国立大学」を指定した。第1陣は東京大学、京都大学、東北大学だ。これらの大学は経営の自由度が増すとともに、世界トップ大学との比較で成果を問われる。もはや、86校を同列と見なす大学関係者はいない。

 京大は大学の成果を活用する事業会社の設立をいち早く決めた。企業が抱える課題に対し、研究者が専門性を生かしてコンサルティングをしたり、企業人向けに研修したりする子会社を、18年度に立ち上げる。阿曽沼慎司理事は「文科省が補助金事業ではなく、指定国立大という新制度を打ち出した以上、この仕組みを活用すべきだと考えた」と、規制緩和を生かす意識を強調する。

 国立大の大半が子会社を持たない中で、京大は技術移転機関、ベンチャーキャピタルと合わせ、産学連携で子会社を三つ持つことになる。ほかの大学にはできない相乗効果で成果を引き出す一歩を踏み出した。

投資を解禁


 「相次ぐ国立大の規制緩和は、東大の要望が次々、実現した結果だ」。東大執行部の1人はここ半年ほどの政府、文科省の動きをこう説明する。

 4月に大学所有の土地・建物の貸し付けと、寄付金原資に限った投資信託、外貨預金、社債や外国債の購入が解禁された。財テク原資の範囲は、土地貸付料や特許料の収入に広がる見込みだ。8月には大学発ベンチャーの株式の長期保有が可能になり、多額の上場益を狙える環境が整備された。

 東大はこの規制緩和を背景に、抜本的な人事システムの改革に乗り出す。21年度までに任期付き雇用の若手研究者300人を任期なしに転換する方針だ。

 任期なし雇用の若手研究者は06年度から10年間で520人減った。任期付き雇用の研究者は任期中に成果を出すことが迫られ、研究が小粒になる傾向にあった。

雇用原資稼ぐ


 雇用の原資は外部研究費の間接経費、産学連携関連、規制緩和による資産運用などで稼ぐ。一つ一つは年により変動するが、収入源が多ければ全体の振幅は抑えられる。「東大ならスケールメリットを生かせる」(小関敏彦理事)ともくろむ。

 国立大学法人化後も長く続いた政府の規制が緩和されるのは、運営費交付金に頼らぬ“大学経営”を後押しするためだ。優れた大学とは自己資金獲得を含め経営力にたけ、それにより研究・教育のレベルを高められる大学―。そんな新たな定義が浸透し始めている。
指定国立大の指定書交付式(右から)里見東北大総長、五神東大総長、山極京大総長

日刊工業新聞2017年9月20日

山本 佳世子

山本 佳世子
09月22日
この記事のファシリテーター

今夏、指定国立大の選にもれた大学の残念がりようは予想以上だ。
3校目に東北大が入ったことで「うちもかなりがんばったプランだったのだが」と悔しがる。
東大の若手支援策は、通常の大学でも仕組みとしては可能だが、財源捻出と併せて実行は難しい。
指定国立大は、他大学を強力に刺激する“厳選選抜校”といえそうだ。

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