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防災だけじゃない!ビジネスで生かす気象データ

気象庁気象研究所所長・隈健一氏インタビュー
**気象データ 企業の活用支援
 1日は防災の日。2017年は7月に発生した九州北部豪雨をはじめ、記録的な大雨が全国で見られた。気象庁気象研究所の隈健一所長は、メカニズムの解明を進めると同時に、地球温暖化の影響についても調べる考えだ。さらに気象データを活用してもらい、防災・減災など「企業ニーズに応えたい」と話す。

―九州北部豪雨から得た研究課題は。

「豪雨の詳細なメカニズムの解明が必要だ。積乱雲のライフステージ(発生から消失までの過程)をより的確に表現できるようにしたい。さらに、(積乱雲が連なって形成する)『線状降水帯』による大雨が、地球温暖化に伴って増えているのかどうかも長期的な研究テーマだ」

―産業界では気象研の持つ豊富な気象データの活用を期待する声があります。

「既にJR東日本とは、列車などへの突風対策について共同研究を進めている。また、産業技術総合研究所とは、気象予測データを太陽光発電に生かすといった共同研究に取り組んでいる。そういった研究を、他の分野も含めて拡大したい」

―具体的には。

「気象データを農業や太陽光発電のデータと組み合わせれば、ビジネスとして育つのではないか。アイデアを交換し、産業界に生かす方法を考える必要がある。気象庁とも相談しながら、どういった形なら企業のニーズに応えられるか考えたい。気象研究が進み国民のためになるのであれば、どんどん進めた方がいい」

―気象研として今後の課題は。

「10年先の気象業務をどう改善していくのかや、どういった研究を進めれば気象業務の改善につながるかを1、2年以内に示すつもりだ。気象庁内の要望と、近年の科学技術の進展を踏まえ、新たな研究計画を策定したい。気象研だけでなく大学や研究機関をうまく巻き込み、日本の気象業務が発展する仕組み作りを展開できれば」

―若手研究者の育成も課題です。

「最近は公務員試験採用ではなく、博士号の取得者が選考採用で気象研に入る事例も増えている。気象業務をしっかり理解し、研究することをたたき込みたい。コミュニケーションを取りながら、若手研究者の進むべき道を示したい」
隈健一氏

【略歴】くま・けんいち 83年(昭58)東大院理学系研究科修士課程修了、同年気象庁入庁。09年予報部数値予報課長、14年福岡管区気象台長、16年気象庁観測部長、17年気象研究所長。東京都出身、58歳。

【記者の目/災害の教訓生かした研究期待】
 災害に対するレジリエンス(復元力、強靱(きょうじん)さ)を高めるには、災害を引き起こす恐れがある現象を一刻も早く検知し、防災に役立てる仕組みの構築が必要だ。九州北部豪雨のような災害の教訓を生かした研究や、人材育成の推進が求められる。
(福沢尚季)
日刊工業新聞2017年9月1日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
気象データを「守り」だけでなく「攻め」にも活用する場面が今後もさらに増えそうです。

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