宮内庁御用達、「風速30mでも壊れないビニール傘」とは?
日本の傘文化はどう変わっていくのか
この季節、街角にはビニール傘の花が咲く。突然のゲリラ豪雨でもコンビニに飛び込めばワンコインでしのげる。「使い捨て」のイメージがあるビニール傘だが、1万円近くする宮内庁御用達のビニール傘がある。皇后さまが雨の園遊会や被災地ご訪問でお差しになられる気品あふれるあの透明な傘だ。
このビニール傘『縁結』(エンユウ)を開発したのは、東京・浅草寺近くにあるホワイトローズ(東京都台東区)。ビニール傘を世界で最初に開発した会社だ。
百貨店や通販で手に入る。正確には「ビニール傘」ではない。塩化ビニールと鉄の骨ではなく、繊維強化プラスチック(FRP)製の骨・オレフィン系3層構造のカバーに「逆心弁」を装着した傘は、中からの風を通し外からの雨を通さず、風速毎秒30メートルの風でも壊れない。
2016年10月には「東京都ベンチャー技術特別賞」を受賞した。小池百合子東京都知事も愛用するクリアな傘は、都議選の街頭演説でも活躍しそうだ。
まもなく全国的に梅雨入り。雨が降り出すとすぐにビニール傘がコンビニエンスストアの店頭に並ぶ。ワンコインで手に入る便利さから、雨傘を持ち歩かなくなる。
日本の傘の年間販売数は推計で約1億3000万本と世界一。その大半をビニール傘が占め、多くは使い捨てられているという。コンビニにとっては確実に利益が出る商品らしい。
利用者としても安くて入手が容易だから、強風で骨が折れた時に気楽に捨てられる。ただ先端部分を接着剤で固定したビニール傘は分解・再利用が困難で、そのまま埋め立て処分するのが現実という。
「壊れにくいビニール傘」の開発が進むが、逆転の発想で新商品を生み出したのが、健康商品を展開する長寿乃里(横浜市西区)である。強風時にあえて折れる構造で、一度畳んで開けば元に戻る。普通のビニール傘より少々お高いが環境には良い。今週から全国4500の郵便局でも販売を始めた。
川柳に〈ごふくやのはんじゃう(繁盛)を知る俄にわか雨〉とある。江戸の呉服屋・越後屋は、雨が降ると屋号と番号が入った番傘を無料で貸し出した。むろん店の宣伝目当てだったが、現代の日本人も江戸時代のエコやリユース文化を見習うべきだろう。
駆け出し記者の頃、中小企業の取材で横浜の臨海部にある工場地帯をよく歩いた。スマートフォンも全地球測位システム(GPS)もない時代。取材先を探して長時間歩くと、汗が噴き出てくる。
そんな時に救いとなったのが、道路沿いにある飲料自動販売機である。炎天下、キンキンに冷えた炭酸飲料の何とうまかったことか。
その飲料自販機が、低価格で豊富な品ぞろえのスーパーやコンビニエンスストアに押されて苦戦している。飲料各社はスマホを活用した新サービスや電子看板化など、あの手この手で自販機の活性化に取り組む。
ダイドードリンコは自販機の脇に7本の傘を入れた箱を取り付け、急な雨の際に誰にでも無料で貸し出すサービスを首都圏と愛知県で始めた。
東京急行電鉄、西武鉄道、名古屋鉄道と連携して忘れ物傘に社名を入れ、首都圏では約170台に設置する。大阪市内では1年半前、関西地域では1年前から始め、返却率は7割に上るという。
高齢化と人口減少が進み、今後はコンビニも商店もない過疎地が増えるだろう。その際、生活必需品を販売するツールとして自販機がクローズアップされる可能性がある。自治体も新しい活用法を検討してみてはいかが。
このビニール傘『縁結』(エンユウ)を開発したのは、東京・浅草寺近くにあるホワイトローズ(東京都台東区)。ビニール傘を世界で最初に開発した会社だ。
百貨店や通販で手に入る。正確には「ビニール傘」ではない。塩化ビニールと鉄の骨ではなく、繊維強化プラスチック(FRP)製の骨・オレフィン系3層構造のカバーに「逆心弁」を装着した傘は、中からの風を通し外からの雨を通さず、風速毎秒30メートルの風でも壊れない。
2016年10月には「東京都ベンチャー技術特別賞」を受賞した。小池百合子東京都知事も愛用するクリアな傘は、都議選の街頭演説でも活躍しそうだ。
日刊工業新聞2017年6月22日
「あえて折れる」傘も
まもなく全国的に梅雨入り。雨が降り出すとすぐにビニール傘がコンビニエンスストアの店頭に並ぶ。ワンコインで手に入る便利さから、雨傘を持ち歩かなくなる。
日本の傘の年間販売数は推計で約1億3000万本と世界一。その大半をビニール傘が占め、多くは使い捨てられているという。コンビニにとっては確実に利益が出る商品らしい。
利用者としても安くて入手が容易だから、強風で骨が折れた時に気楽に捨てられる。ただ先端部分を接着剤で固定したビニール傘は分解・再利用が困難で、そのまま埋め立て処分するのが現実という。
「壊れにくいビニール傘」の開発が進むが、逆転の発想で新商品を生み出したのが、健康商品を展開する長寿乃里(横浜市西区)である。強風時にあえて折れる構造で、一度畳んで開けば元に戻る。普通のビニール傘より少々お高いが環境には良い。今週から全国4500の郵便局でも販売を始めた。
川柳に〈ごふくやのはんじゃう(繁盛)を知る俄にわか雨〉とある。江戸の呉服屋・越後屋は、雨が降ると屋号と番号が入った番傘を無料で貸し出した。むろん店の宣伝目当てだったが、現代の日本人も江戸時代のエコやリユース文化を見習うべきだろう。
日刊工業新聞2017年6月16日
自動販売機で「貸し傘」も
駆け出し記者の頃、中小企業の取材で横浜の臨海部にある工場地帯をよく歩いた。スマートフォンも全地球測位システム(GPS)もない時代。取材先を探して長時間歩くと、汗が噴き出てくる。
そんな時に救いとなったのが、道路沿いにある飲料自動販売機である。炎天下、キンキンに冷えた炭酸飲料の何とうまかったことか。
その飲料自販機が、低価格で豊富な品ぞろえのスーパーやコンビニエンスストアに押されて苦戦している。飲料各社はスマホを活用した新サービスや電子看板化など、あの手この手で自販機の活性化に取り組む。
ダイドードリンコは自販機の脇に7本の傘を入れた箱を取り付け、急な雨の際に誰にでも無料で貸し出すサービスを首都圏と愛知県で始めた。
東京急行電鉄、西武鉄道、名古屋鉄道と連携して忘れ物傘に社名を入れ、首都圏では約170台に設置する。大阪市内では1年半前、関西地域では1年前から始め、返却率は7割に上るという。
高齢化と人口減少が進み、今後はコンビニも商店もない過疎地が増えるだろう。その際、生活必需品を販売するツールとして自販機がクローズアップされる可能性がある。自治体も新しい活用法を検討してみてはいかが。
日刊工業新聞2017年6月20日