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九州北部豪雨をもたらした「線状降水帯」の予測精度を上げろ!

防災科研が民間と「客観解析値」を共同研究
 防災科学技術研究所は、気象予測などに利用できるデータ「客観解析値」を作成して民間気象会社に提供し、首都圏の天気予報の精度を向上させるなどの共同研究を10月にも始める。防災科研の持つ雲や雨の基になる水蒸気を測る「マイクロ波放射計」などの観測装置から得たデータから将来の大気状態を予測する技術が確立すれば、7月の九州北部豪雨をもたらした「線状降水帯」など、首都圏でも起こりうる気象を精度よく予測できる。

 客観解析値は、現況の気象状態を表す値。将来的な大気の状態の予測(数値予測)に使う「初期値」の元になる。数値シミュレーションで算出した気象状態を、観測点で得たデータや統計情報を使って修正(データ同化)して作成する。

 一般的に民間の気象会社が初期値を作成する場合は、気象庁や海外の機関による数値予測の結果や客観解析値を使っている。

 民間気象会社との連携強化も目指す。2016年度に始めた企画公募型の共同研究の一環。客観解析値は初期値としての利用に限定せず、さまざまな使い道を企業に募る。
                

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 九州北部豪雨は、積乱雲が連なって形成される「線状降水帯」が長時間停滞することで発生した。防災科研は、マイクロ波放射計をはじめ、晴れた場所の風の分布を捉える「ドップラーライダー」など、積乱雲の発生や成長過程を観測できる装置を首都圏に20カ所持つ。それらの観測網で得たデータから作成した客観解析値を使えば、より高精度な天気予報につながる可能性がある。また数値予測技術が改良すれば、線状降水帯の予測精度も向上できると期待される。 (日刊工業新聞科学技術部・福沢尚季)

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