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UQモバイル、シェア拡大の裏に「残業は20時まで」

規模が小さい分、組織の質で優位で勝負。働き方改革が後押し
UQモバイル、シェア拡大の裏に「残業は20時まで」

専門家のコンサルタントを交えて業務効率化施策を議論する(UQコミュニケーションズ提供)

 格安スマートフォン市場で存在感を高めている「UQモバイル」。事業を展開するUQコミュニケーションズ(東京都港区、野坂章雄社長)は、積極的な広告出稿や実店舗の出店拡大によりシェアを拡大している。一方、その裏で着実に進めてきた「働き方改革」が事業の推進力を高めている。格安スマホ市場の競争が激しくなる中、改革の成果が組織力の向上に寄与し始めている。

 7月下旬、UQコミュニケーションズの会議室では、業務のグループごとに働き方を見直す方向で議論していた。各従業員の仕事内容とそれに要した時間などを見える化し、専門のコンサルタントの助言を得て、業務を効率化する施策を決定する。毎月定例の会議だ。

 こうした取り組みは2016年4月に始めた。新たな事業の柱として「UQモバイル」を始め、半年が経過したころだ。その背景には、限られた数の従業員の力で新規事業を推進し、競合他社に打ち勝つためには「仕事の生産性向上が欠かせないという問題意識があった」(UQコミュニケーションズ総務・人事部の長野修平人事グループマネージャ)という。

 開始から1年以上が経過し、すでに効果は表れている。例えば営業部門では「UQモバイル」の直販サイト運営などの新規施策に充てる業務時間が、16年6月時点で全体の5%にとどまっていた。

 各従業員の仕事内容などを見える化し、業務を効率化したり、不要な業務をやめたりすることで、17年1月時点では新規施策に充てる業務時間が15%にまで拡大した。

 各部署での業務改善と同時に、全社一律の働き方改革も導入した。16年6月から残業を原則20時までに設定したほか、朝型勤務を推奨。個人が集中して作業できるスペースを設置するなどオフィス環境も整備した。

 さらに17年秋には、IT関連などの講座の受講費を支給する制度を設ける。業務効率化などによって捻出された時間を自己啓発に活用するよう従業員を促し、人材の質を高める好循環を生み出そうとしている。

 長野人事グループマネージャは「競合する(ソフトバンクの格安ブランドである)ワイモバイルなどに比べ、我々は組織の規模が小さい。その中で組織の質で優位に立てられるように(働き方改革を通じて)生産性を高めたい」と意気込んでいる。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2017年8月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
UQコミュニケーションズの野坂章雄社長は格安スマホ市場で先を行くワイモバイルに対抗意識を燃やしており「追いつき追い越したい」と力を込める。その実現には広告出稿や店舗出店に加えて、働き方改革を通じた組織力の底上げもカギを握りそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

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