上位6社でシェア6割、格安スマホは淘汰・再編の着信音

大手は広告宣伝や実店舗展開でさらに強く、体力のない事業者苦境に

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 格安スマートフォン市場に転換期が近づいている。異業種の新規参入などで急速に成長してきた同市場だが、すでにシェアは上位に集中しており、生き残りの展望が描けずに撤退する事業者も出てきた。今後は認知度などで優位に立つ少数の勝ち組業者を軸にした再編・淘汰(とうた)が進むとの見方もある。

 「『ぷららモバイルLTE』について、2017年11月30日をもちまして終了させていただくこととなりました」―。5月2日、NTTぷらら(東京都豊島区)は格安スマホサービスの終了のお知らせをホームページに掲載した。13年11月にサービスを始めた「ぷららモバイル」は4年で終止符を打った格好。同社では「厳しい事業環境を踏まえて経営資源の選択と集中を図るため」と説明する。競争の激しい格安スマホ市場で、今後の顧客拡大は難しいと判断したもようだ。

 格安スマホ事業者を含む仮想移動体通信事業者(MVNO)は16年12月時点で668社に上る一方、格安スマホサービスのシェアの6割は上位6社が占め、事業者数は飽和状態だ。こうした中でのNTTぷららの撤退は業界に淘汰の波が押し寄せる前触れとも捉えられる。
                    

 IT調査会社のMM総研(東京都港区)の横田英明常務は「今後は契約者数が中規模の事業者は買収対象となり、小規模の事業者は撤退に追い込まれるケースが増えるだろう」と予想する。MMDLabo(同渋谷区)の吉本浩司社長も「業界内で統合や相互提携などが進む」と見る。

 格安スマホ事業者同士の顧客獲得をめぐる争いは、認知度の高さなどで優勝劣敗がつきつつある。

 シェア拡大には大規模な広告宣伝や実店舗によるサポート体制の構築が効果的だが、その点で資本力のある携帯大手傘下の格安ブランドは強い。ソフトバンクの「ワイモバイル」は積極的な広告宣伝のほか、全国約1000店舗の充実した体制を持つ。KDDI傘下の「UQモバイル」も16年秋から店舗展開などの強化をはじめ、契約者数を伸ばしている。

 知名度の高い異業種の参入者も気を吐く。高いシェアを持つ楽天の「楽天モバイル」はその一つ。対話アプリケーション「LINE」で約6600万人の利用者を持つLINEの「LINEモバイル」は3月からテレビCMや実店舗の出店を始めており、浮上してきそうだ。
ケイ・オプティコムが渋谷に開設した「マイネオ」の直営店

 一方で販売力の弱さから、戦略を転換する事業者も出て来た。「b―mobile」が苦戦していた日本通信はU―NEXTと協業体制を構築。「日本通信がネットワークを管理し、U―NEXTが顧客を開拓する分業体制」(福田尚久日本通信社長)を整え、生き残りをかける。

 業界では今後、市場がさらに拡大する過程では、大規模な広告宣伝や実店舗の展開に加えて、知人や友人からの「口コミ」が顧客の獲得競争を左右すると指摘されている。よい口コミの醸成には丁寧な顧客対応の積み重ねや通信品質の安定を実現する不断の努力が必要。広告宣伝や実店舗の展開なども含めて先行投資が欠かせない。体力のない事業者は、撤退などの判断を迫られそうだ。

 

日刊工業新聞2017年5月24日「深層断面」から抜粋

COMMENT

 格安スマホ事業の急成長がスマホ市場全体に与えた影響は小さくない。MM総研の調査によると16年度のスマホ出荷台数は初めて年間3000万台を突破。格安スマホ用のSIMフリー端末が前年度比63・5%増と大幅に伸びたことが全体を押し上げた。一方で携帯大手にとって格安スマホは顧客の流出先になっており、対策を取らざるを得ない状況にある。  携帯大手の対策は料金プランの設計にも現れている。KDDIの田中孝司社長は1月、auの学割プランの発表に際して「(月2980円から利用できる価格体系は)格安スマホの領域に挑戦した」と力を込め、対抗意識をあらわにした。  割安感を求める顧客の受け皿として傘下の格安ブランドを強化する動きも活発だ。ソフトバンクはNTTドコモやKDDIの顧客が「ワイモバイル」への移行時に適用していた割引サービスを、3月以降はソフトバンク利用者からの移行にも適用。「ワイモバイル」と連携し、企業全体で顧客の流出を防ぐ体制を鮮明にしている。格安スマホ市場はさらに成長が見込まれており、携帯大手は今後も格安スマホ市場の動向を注視し、対策を練る必要がありそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

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