全国最年少町長はこの3年間、何を考え行動してきたのか

【対談】京都府与謝野町町長・山添藤真氏×「和える」代表・矢島里佳氏

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全く別の道を考えていた若手


ーそれは職人さんから声が上がったのですか?
山添 そうです。若手の職人さんが中心となっています。40代以上の方々は名のある職人さんたちが多く、グローバルに展開していこうという意識が案外強い。グローバル展開や、クリエイターと職人さんが協働する動きが全国的に広がる中で、実は若い世代は全く別の道を考えていたのです。世界に進出したいわけでも、クリエイターとものづくりを共有したいわけでもない。彼らには「300年の歴史を受け継ぎ、次の300年の歴史をつくる事業がしたい」という想いがありました。日本の産地の中で自分たちにどういう強みがあって、弱みがあるのか。お互いを知り、学び、各産地が補完し合う関係にならなければならない。そのために他の産地とも交流し、情報や課題をみんなで共有し織物業を次世代につないでいこう、という考えです。
 
ークリエイターとのコラボや、グローバル展開などが意外と失敗している例も多いです。
矢島 よくある自治体の失敗例ですよね。「デザイナー、クリエイターを呼んできて、モノを作りました。けれども、デザインしてそこで仕事が終わるとなると、誰も出口の責任を持てないため、職人さんのもとに在庫が残る。」というような。そのような失敗事例を数多く見聞きしてきてたことが、今の和えるのビジネスモデルに繋がっています。ですから、“0から6歳の伝統ブランドaeru”では、私たち和えるが主体者となり、責任を持って商品の企画、開発販売までを行います。職人さんに和えるのオリジナル商品をお作り頂き、全て買い取りさせて頂き、自らの責任で出口も作り皆様にお届けする。三方よしの循環が生まれるビジネスモデルを大切にしています。

山添 若手の職人さんが「そういう事業をやっても在庫を抱えない、売らないでは、ビジネスとしてフィフティーフィフティーの関係じゃない」と言ったことがとても印象に残っています。今ある取引先と、太い関係を構築する方が優先だと。新しいことも芽はあるかもしれないが、“太さ”をどう持つかが大事だと。若い職人さんが地盤をしっかり考えていたことにとても感銘を受けました。若手がこのような発想にたどり着くのは、先輩職人、今の40代が地場産業を盛り上げようと挑戦する背中を見てきたからです。ここにも世代間のサイクルは生まれています。

三代目の生き方と価値観の変容


ー「平成の大合併」があって与謝野町も3つの町が一つになりました。自治体にとって良い面も悪い面もあったと思いますが。
山添 地方のまちづくりの環境が整ってきたように感じます。根本の要因は一人ひとりの価値観の変容です。「売り家と唐様で書く三代目」という川柳があります。これは先代の財産を失う三代目の生き方を皮肉った川柳なんです。しかし、この三代目というのは、自然や愛する人たち、文化を大切にする生き方です。今や私たちは成熟した社会の中で、皮肉ではなく、そういう生き方ができるようになり始めているように感じます。人の価値観が変容していく中で、働き方改革も含めていい流れになってきたなと実感しています。これから日本国内の地域は必ず良いカタチに継承されていくでしょう。市町村合併においては、将来世代から「正しい選択だった」と評価されるように、それぞれの基礎自治体が最善を尽くすことが重要だと思います。

矢島 価値観の変容は「和える」でも、とても大事な要素です。働くことを通して、一人ひとりの価値観が変容していくような組織の在り方、お客様、社会との関わり方、ビジネスモデルの生み出し方をしていきたい。地域社会も同じですよね。与謝野町をはじめ、全国の自治体の方々と一緒になって、「次世代の子どもたちが、人生の豊かさを感じられる日本」を残したいと思っています。
矢島さん


【略歴】
●与謝野町長
山添 藤真(やまぞえ とうま)
1981年生まれ。江戸時代から続く丹後ちりめん織元の長男として育つ。2000年京都府立宮津高校卒業後、フランスに留学。2004年フランス国立建築大学パリ・マケラ校に入学し、都市設計から住宅政策まで、幅広く建築を学ぶ。2008年フランス国立社会学科高等研究員パリ校、2年次終了。2010年から2014年まで与謝野町議会議員を経て、2014年4月与謝野町長就任。
●株式会社「和える」代表取締役
矢島 里佳(やじま りか)
1988年生まれ。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。世界経済フォーラム(ダボス会議)「World Economic Forum - Global Shapers Community」メンバー、2015年日本政策投資銀行「女性新ビジネスプランコンペティション女性起業大賞」受賞。

COMMENT

矢島里佳
和える
代表

 私のお気に入りは、与謝野町のかべ新聞「うちのまち」。与謝野町の各家庭に配布されているのですが、WEBでも見ることが出来ます。改めて自分たちの町を見直して、子どもたちに与謝野町の魅力を伝えていこうという取り組み。町民の皆様の意外な習慣や動植物の生態系、レジャースポットに絡めつつ町の地形の珍しさを伝えるなど、毎号様々な視点から楽しめ、素朴でほっこりする新聞です。  毎号「うちのまち」の記事に連動して開催される「うちのまち講座」も魅力的!記事を読んで興味を持ったら、更に深めるための行動を起こせる循環が生み出されているのです。私も「うちのまち講座」に参加しに行きたいと思っているところです。この3年間緩やかに寄せていただいている、与謝野町をはじめとした海の見える京都、丹後地域はとても魅力的。みなさん、ぜひ遊びにいらしてくださいね。

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