防災科研、大型実験施設を活用して!社会全体で強固な復元力を

地震・降雨・積雪…。産学連携で環境再現し減災目指す

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「大型降雨実験施設」(茨城県つくば市)
 防災科学技術研究所が企業や大学などとの産学官連携の研究開発を加速している。地震や降雨、積雪などを再現できる大型の実験施設の活用を促している。防災科研の「先端的研究施設利活用センター」(茨城県つくば市)が旗振り役となっており、国が持つ実験施設の有効活用が防災・減災の最新の技術開発につながる可能性がある。

 完成車メーカーや大手IT企業などが力を入れる自動運転技術やコネクテッドカー(つながる車)。その開発に有用な施設が「大型降雨実験施設」だ。

 約3000平方メートルの面積に降る大雨を再現できる世界最大級の施設となる。自動車の開発以外にも、土砂崩れを検知するセンサーの検証などにも活用できる。

 同施設では、天井に配置されている2176個のノズルから、最大で1時間当たり300ミリメートルの降水が可能。そのため2011年7月に新潟県で起きた観測史上1位となる10分当たりの豪雨の降水量も再現できる。実際に自動車メーカーが自動運転技術の実証に大雨の中で車が障害物を検知できるかといった試験を行った。

 また、先端的研究施設利活用センター戦略推進室の室長も務める酒井直樹主任研究員は「ワイパーの動きなど、車が取得した雨の情報を得られれば、各地点で降る雨の状況をリアルタイムで把握できるようになる可能性がある」と話す。そこから得られた情報を大量データ(ビッグデータ)として生かせば、防災・減災につなげられる。

 一方、地震対策の研究開発に役立つのは「大型耐震実験施設」だ。14・5メートル×15メートルの振動台を使い、大規模な耐震実験ができる。
「大型耐震実験施設」(茨城県つくば市)

 建設コンサルタントのCPC(大阪市西区)や高知大学、佐賀大学などとの共同研究に活用しており、鉄筋でできた籠に石を詰めた構造体「蛇籠(じゃかご)」を積み上げて作る構造物「蛇籠擁壁」の安定性向上を目指している。

 15年4月のネパール・ゴルカ地震では、道路擁壁として使われていた蛇籠が崩壊するケースが多かった。共同研究では地震の揺れによる蛇篭擁壁の変形メカニズムを解明し、耐震性を高める方策を開発。その知見をネパールへ広めたい考えだ。

 防災科研地震減災実験研究部門の中澤博志主幹研究員は「ネパールの技術者育成という側面もある」と指摘、現地での防災活動の推進に貢献する。

 そのほか防災科研は、実物と同じ大きさの家やビルなどが地震で壊れる過程を研究できる「実大三次元震動破壊実験施設」(E―ディフェンス、兵庫県三木市)や、降雪・積雪センサーの性能試験などに有用な「新庄雪氷環境実験所」(山形県新庄市)といった施設を全国に持つ。

 酒井室長は「近年の厳しい気象環境下での安全・安心を維持するための技術開発は、周囲の環境を再現した中で行う必要がある」と主張する。
「実大三次元震動破壊実験施設」(防災科研提供)

新庄雪氷環境実験所の雪氷防災実験棟(防災科研提供)

(文=福沢尚季)

日刊工業新聞2017年8月16日

COMMENT

九州北部をはじめ全国を襲った大雨や、近い将来の発生が予測されている巨大地震といった自然災害の被害軽減に向け、防災科学技術の研究開発は日本にとって喫緊の課題の一つと言える。防災科研の林春男理事長は「社会全体として速やかな復旧・復興を実現できるレジリエンス(復元力、強靱(きょうじん)さ)をつくらなければならない。そのためには産学官が共同で(技術開発を)進める必要がある」と話す。 (日刊工業新聞科学技術部・福沢尚季)

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