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【三菱重工業 劇場型改革の真価#05】フォークリフトは世界で戦えるのか

<挑戦する企業アーカイブ>中量産品ビジネスの試金石
【三菱重工業 劇場型改革の真価#05】フォークリフトは世界で戦えるのか

中央が前川篤MFET社長

 ユニキャリアホールディングスのM&A(合併・買収)。国内外の競争法上の審査、承認手続きが継続し、株式譲渡実行日を約3カ月延期したが、2016年3月に三菱重工業が65%、ニチユ三菱フォークリフトが35%を取得する形で総額約1100億円の大型買収が完了する見通しだ。ニチユ三菱、ユニキャリアを合算しても事業規模は首位の豊田自動織機の半分強。勝算はあるのか―。

 「万難を排し、世界最強の事業体をつくる。単なる足し算ではない」と三菱重工社長の宮永俊一。ユニキャリアを傘下に収めるとフォークリフト事業は連結売上高の約1割に達し、良くも悪くも業績インパクトが膨らむ。

 ユニキャリア買収をめぐり、独キオングループと競り合った結果、決して安くない”買い物“になるが「それ以上の価値を生み出せるかどうか。今からの問題だ」と機械・設備システムドメイン長取締役常務執行役員の木村和明。単なる防衛的買収ではない。

 「ユニキャリアのガソリンエンジンをニチユ三菱で使えないか」「米国、中国市場を攻める体制は」。10月1日付で発足した3社による準備委員会。法に触れない範囲で週に一度、活発な議論が行われている。責任者は三菱重工取締役副社長執行役員の前川篤。

 前川は米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンスという巨人を相手に、三菱重工の中核事業であるガスタービンを世界一にするべく取り組んできた。

 事業規模は違えど、追いかける立場は同じ。「豊田自動織機は確かに大きいが、キャッチアップできる」(前川)。前川は過去、オランダ工場閉鎖や相模原製作所での生産停止など痛みを伴う事業改革を断行し、ニチユとのフォーク事業統合を成し遂げた。TCMと日産フォークリフトを統合し、同時期に発足したユニキャリアのこともよく知る。

 「組織が硬直する前に実質4社をリシャッフルすれば、合理化が早く進む」(前川)との読みが働く。ニチユ三菱、ユニキャリアの合併を視野に入れるには、発足2年の今しかなかったともいえる。

 三菱重工にとってフォーク事業は三つの意味がある。発電所やMRJなどプロジェクト物に比べて中量産品はリードタイムが短く、短期収益に効く。二つ目は景気の先行指標。物流は設備投資の動きに敏感だ。

 三つ目がIoT(モノのインターネット)。「あらゆる工場や倉庫で使われ、センサーを付ければロボットにもなる。顧客視点に立てば、他社製フォークを含めたデータ解析が必要になろう」と前川。

 ユニキャリア買収について「物流は間違いなく伸びる。米国ではニチユ三菱が独ユングハインリッヒと手を組んでおり、連合体として良いビジネスが期待できる」(田井宏介大和証券チーフアナリスト)。生かすも殺すも、三菱重工の差配にかかっている。
(敬称略)
日刊工業新聞2015年12月21日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
 ニチユ三菱フォークリフトとユニキャリアは、2017年10月をめどに経営統合することとなった。両社を統括する三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングス(M―FET)は、1年をかけて結論を出す方針だったが、半年ほど前倒した格好だ。  両社合算でシェア・売上高とも世界3位となったが、さらに上位を追うには経営統合が最善と判断。生産や調達、研究開発などでシナジーの最大化を急ぐ。ニチユ三菱は現段階でユニキャリア株式35%を保有し、持分法適用関連会社としていた。残り65%を保有するM―FETから全株式を取得して、17年1月1日付でユニキャリアを完全子会社化する。  M―FETの前川篤社長は5月時点では、「(16年3月末のユニキャリア買収完了後)両社をすぐに統合する案があったが、これは難しい。1年かけて最大の効果を考える」としていた。  フォークリフト業界では、首位の豊田自動織機が22・1%、2位の独キオングループが15・7%の世界シェアを持つ。2社を追うニチユ三菱・ユニキャリア連合は10・6%で、首位とは2倍以上の開きがある。「これをいかにキャッチアップするかがポイントだ」と前川社長は指摘する。

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