ユニキャリア売却の波紋!「豊田自動織機はほとんど関心を示さなかった」

三菱重工買収へ。陰の勝者は産業革新機構?

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産業革新機構の能見公一前社長(左)と志賀俊之会長兼CEO(日産副会長)
 三菱重工業グループがユニキャリアホールディングス(HD、東京都品川区)を買収する。独キオングループとの競り合いの結果、買収額はつり上がった印象があるが、フォークリフト世界シェア首位の豊田自動織機への挑戦権をなんとか手中に収めた。ただ、今回の大型M&A(合併・買収)における陰の勝者は、ユニキャリアHDの企業価値を高め、”高値で売れる会社“に衣替えさせた官民ファンドの産業革新機構なのかもしれない。

 ユニキャリアHDの売却先をめぐり、産業革新機構は一貫して経済合理性や雇用確保などを判断材料とし、外国資本も排除していなかった。キオンには中国資本が入っており、官民関係者から懸念の声があったのは事実だが、そうした声をよそに革新機構は公平な入札を行ってきた。

 当初劣勢とみられていた三菱重工、ニチユ三菱フォークリフトが執拗(しつよう)に食い下がった背景には、ユニキャリアHDの収益力はもちろんだが、業界首位への切符を失う可能性があったからだろう。キオンの手に落ちれば、豊田自動織機とキオンが突出してしまう。

 ニチユ三菱は業界3位の独ユングハインリッヒと米国事業で協業するなど友好関係にあり、仮にこの枠組みが発展するのであれば、一気に業界首位の座も視野に入る。

 今回、三菱重工グループによるユニキャリアHDの株式取得額が妥当かどうかは、今後の提携深化にかかっている。元をたどれば国内フォークリフト4社に行き着く混成企業となり、ニチユ三菱に至っては社内でのシナジー刈り取りもこれからという段階。

 ユニキャリアHD買収については「豊田自動織機はほとんど関心を示さなかった」(関係筋)。国内企業を手中に収めるメリットを感じなかったからとみられる。ニチユ三菱とユニキャリアHDは当面、独立企業として運営される。事業環境が比較的良好であるだけに、互いの主張がぶつかり、連携が進まない恐れもある。買収効果を最大化するには、筆頭株主となる三菱重工の采配にかかっている。
 (文=戸村智幸、鈴木真央)

産革機構のトップ人事は影響したか?


ニュースイッチオリジナル2015年6月13日付


 官民ファンドの産業革新機構は12日、日産自動車の志賀俊之副会長(61)を会長兼最高経営責任者(CEO)として迎え入れる人事を発表した。能見公一社長兼CEO(69)は退任し、勝又幹英専務執行役員(55)が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する。6月30日付で就任予定。同機構は2009年7月の設立から6年経過し、人事の刷新に踏み切ることにした。

 勝又氏は金融機関や民間の投資ファンド時代の経験を生かし実務を取り仕切る。志賀氏は日産自動車の最高執行責任者(COO)などを経て、2013年から副会長を務めている。非常勤だが、日本自動車工業会の会長を務め、現在は経済同友会副代表幹事の職にあるなど産業界との幅広い窓口として期待される。

 なぜ志賀氏?

 能見社長の退任説は早くから噂されていた。能見氏は前の民主党政権時代の人事で「大株主である政府、安倍政権との関係は必ずしも良くなっかった」(経済界首脳)とも言われている。能見社長の退任は既定路線として、なぜ会長兼CEOとして外部から志賀氏を招聘したのか。

 まず考えられるのが、同機構傘下で経営再建が進む半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの出口戦略への対応。同社はリストラの効果が出始め、2015年3月期は最終利益が823億円(前期は52億円の赤字)と2010年の発足以来初めて最終利益が黒字転換した。

 ルネサス救済にあたっては、同機構のほかトヨタ自動車を始め8社の民間企業が出資した。8社は「ロックアップ」(株式を売却できない契約)の対象ではないため、今年に入ってニコンがすべて保有株式(約0・2%)を売却。69%を保有する産革機構を含め今年9月にはロックアップの期限が来る。今後、ルネサスは成長戦略に向け他社との提携なども選択肢になる。

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

6月30日付で産革機構の会長兼CEOに就いた志賀氏は、ユニキャリアの母体である日産自動車の副会長でもあり立場は複雑だ。ただ、ディール自体は能見社長ら前の経営陣の段階で固まったもの。能見氏はユニキャリアに限らず、出口戦略では日本企業にこだわっていたと言われており、産革機構の他の幹部と路線対立も存在した。現政権の意向とも言われる志賀人事。志賀氏は政府の意向をより忖度するはずだ。今回の三菱重工が買収する枠組みは、重工側の意思のはず。重工は28日、米の原発故障に絡んだ賠償請求額が75億7000万ドル(約9300億円)になる見通しだと発表したが、悪材料打ち消す一つになるか。

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