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SBI傘下になるレオス・キャピタル社長・藤野英人、「今こそ投資家みたいに生きろ!」

SBI傘下になるレオス・キャピタル社長・藤野英人、「今こそ投資家みたいに生きろ!」

レオス・キャピタルワークス社長・藤野英人氏

―新著のタイトル「投資家みたいに生きろ」の真意を教えてください。
 自分が人生の主人公になるということだ。投資家を起業家と言い換えてもよい。自分が自分の人生を選び、納得できる行動を取ることで結果的には小さなことだけど社会がよくなると伝えたい。投資とは(「主体性」「お金」「時間」「決断」「運」のかけ算で構成する)エネルギーを投入して未来からお返しをもらうこと。お金はもちろん大事だが、必ずしもそれだけではない。まずは主体性が大切だ。

―なぜ、それを伝えたいのですか。
 若い人を中心に「失望最小化戦略」の人が増えているように見える中で、その逆の生き方である「希望最大化戦略」を取る人が増えるといいなという思いからだ。前者は『将来はうまくいかない。挑戦しても失敗する。だからお金をためておとなしく生きよう』という考え方。そうした考えの人が増えると失望の連鎖がおき、未来はどんどん暗くなる。一方の後者は『世の中は希望に満ちている。失敗するかもしれないけれど挑戦しよう。挑戦するから未来が開ける』という考え方だ。社会がつまらなくてもそれを楽しくするのは自分次第だと伝えたい。

―投資の「決断」の軸に「好き嫌い」を据える重要性を指摘しています。
 日本人は好き嫌いより損得を大切にするところがある。例えば自分が働く会社が好きな人は59%(「2019エデルマン・トラストバロメーター」より)。半数近くは嫌いなのに辞めることが(目の前の給料などを鑑みて)損だからと会社に残っている。ストレスと時間をお金に換えるという価値観の人が多いと感じる。それはとてもつらい生き方だろう。

一方、米国や中国では80%以上が好きと答えている。嫌いな人の多くは辞めて好きなところに移動するからだ。8割が自社が好きという会社の作ったモノと5割しか自社が好きな人がいない会社のモノのどちらがよいかは明白だろう。嫌いなのに会社に残るという判断は自分にも社会にも害を与えている。嫌いと感じるときは辞めて本当に納得するべき場所に移動するべきだというのが私の考えだ。

―とはいえ、目の前の給料はなかなか捨てきれません。
 (もちろん)お金はなくても大丈夫はうそだ。ただ、年収300万―400万円の人に対して年収1億円の人が幸せかと言えば、必ずしもそうではない。どれだけお金を持っていても嫌いな仕事をしていたら幸せではないはずだ。自分が主体となって人生を選択し、好きと嫌いに忠実に生きていくとうまくいくのではないかと思う。

―投資の要素の一つでありながら、制御できない「運」とはどう向き合うべきでしょうか。
 運は自分が努力し続けるためのツール。私は仮に失敗したら反省や修正をするが、(必要以上に)自分を責めて後悔はしない。サイコロの出目が悪かったと考え、次の挑戦に向けて確率を上げる努力につなげる。一方で成功したときにこそ『しょせんは運』だと思うようにする。そうすれば傲慢(ごうまん)にならず、(日々の努力に対して)手を緩めないようになる。

―ご紹介いただいた『投資思考』はどうすれば習慣化できますか。
 自分の行動を意味づけして、自分の将来や世の中の糧になるのかについて常に考えることが大切だ。一つずつの物事に関心を示して意識を集中させ、何らかの意味を見いだす小さな作業を積み重ねると大きな成果につながる。

―「投資」の真逆の概念として「浪費」を上げ、その向き合い方の重要性も指摘しています。
 自分の行動が投資か浪費かを考えることは大事。ただ、投資だから結果が出るとは限らないし、浪費から得られるものもある。(その中で)浪費かもしれないと思っているものも投資と意識して行動すると向き合い方が変わってくる。結果的に投資だったか浪費だったかというよりも、自分自身がどう向き合うかが大事だ。

―金融庁の金融審査会がまとめた報告書の20―30年間の老後を生きるために約2000万円が必要になるという言及が反発を招いた「老後2000万円問題」について本著では日本のターニングポイントになると書きました。
 年金制度は維持できるが、それだけで生きられる人は減ってきた。ただ、それは人生100年時代と呼ばれるように長生きするようになったから。(老後2000万円問題として大きな反発が起きたのは)そうした現実から(多くの人が)目を背けてきたということだ。私としては原則、自分たちの面倒は自分たちで見るという基本的なことに対して向き合っていない人が多すぎると痛感した。だからプロの投資家として関与できることを考え、(我々の顧客だけでなく)もう少し幅広く世の中に影響を与えたいと考えるようになった。私にとってもターニングポイントになった。
(聞き手=葭本隆太)

<著者略歴>
藤野英人(ふじの・ひでと)氏 レオス・キャピタルワークス社長
早大法卒。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネジャーを歴任後、03年レオス・キャピタルワークスを創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ」シリーズを運用。富山県出身、53歳。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
インタビュー取材は約2カ月前に行ったものです。昨日(3月31日)、SBIホールディングスがレオス・キャピタルワークスの発行済み株式の51.28%を取得すると発表しました。 藤野さんは昨日、自身のフェイスブックで「日本最大のお客様をもち、かつインターネット証券としてNO.1の証券会社であるSBIさんは今後の組む相手としても一番のパートナーであると考えていました。 よりよい最高のチームを作ることができると確信をしています。これからは、さらにITやAIも活用したきめ細かいお客様対応やロボアドの導入、動画でのセミナーの拡充、債券運用の開始、ベンチャーキャピタル業務への展開などを考えています」とコメントしています。 そして最後に「わたしはとてもハッピーです」と締めくくっています。 藤野さんの今後の活躍に期待です。

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