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トラック運転手が大量定年、迫る“物流崩壊”

7年後には4回に1回、商品の輸送をあきらめることに?
トラック運転手が大量定年、迫る“物流崩壊”

トラック運転手は長時間労働が日常化している

トラック運転手不足による“物流崩壊”が迫っている。2027―28年になると必要な運転手の人数に対して25%の人材不足が生じるとの試算がある。単純に考えると企業は4回に1回は商品の輸送をあきらめる計算だ。経済活動への影響を懸念した政府は企業に呼びかけ、物流を持続可能にする「ホワイト物流」推進運動を展開中だ。

目指せ“ホワイト物流”

トラック輸送の生産性向上や、女性と高齢者も働きやすい労働環境への転換を目指す運動が「ホワイト物流」だ。商品の輸送を依頼する荷主企業は「自主行動宣言」を提出すると賛同者として企業名と取り組みが公表される。1月末までに賛同は812社となり、800社を突破した。トヨタ自動車東芝、花王、アスクル、イオンなど大手の製造業や流通業が名を連ねる。国土交通省が運営するホームページ「ホワイト物流ポータルサイト」に宣言の手続きが掲載されている。

荷主企業に期待するのが、商習慣から生まれた「無理、無駄、ムラ」の解消だ。荷物の積み降ろしが先着順であるため、トラック運転手は無駄な待機を強いられて長時間労働が日常化している。トラック運転手による荷下ろしや荷積みも習慣化し、肉体的な負担も大きい。指定通りに届けても、発注者の都合で受け取ってもらえずに荷物を積んで引き返す無駄も発生している。

ホワイト物流ポータルサイトでは、待ち時間解消のための予約受け付けシステムの導入、重労働を軽減する運びやすいパレット活用などの取り組み例も示している。かつてトラック事業者は荷主企業の要望に何でも従っていた。今、無理な要求を断るトラック事業者も出ているという。荷主がホワイト物流への賛同企業であれば改善を申し入れやすくなっており、運動の効果が出始めている。

<高齢化で大量定年>

国交、経済産業、農林水産の3省が19年4月、主要な6300社の代表者宛に賛同を求める文書を送付するなど、政府はホワイト物流を強力に推進する。背景にあるのが運転手不足だ。高齢化による大量定年が迫っており、27―28年に24万―28万人が足りなくなり、必要な運転手の人数に対して24―25%の不足が生じると試算される。国交省自動車局総務課の星明彦企画室長は「あらゆる業態の企業経営の根幹にかかわる問題」と警鐘を鳴らす。「25%不足」が現実になると商品を運べない企業が続出し、日本経済に影響が出る。

現状でもトラック運転手のなり手が不足している。19年3月のトラック運転手の有効求人数は3・01倍となっており、他業種よりも人が集まりにくい。労働時間が全職種平均よりも2割長く、賃金は1割低いため、不人気な職種となっている。

19年には改正貨物自動車運送事業法が順次、施行され、運転手の長時間労働の原因と疑われる行為をした荷主に対し、国交相が勧告できるようになった。荷主企業にとっても物流網は事業基盤である。自社のビジネスを持続可能にするため、「ホワイト物流」への協力が不可欠だ。

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