新幹線で「人と貨物」の混載は広がるか、九州と北海道で実証の狙い
JR北海道とJR九州は2020年内に北海道、九州の各新幹線を使った荷物輸送「貨客混載」の実証実験を行う。両社はそれぞれヤマト運輸や佐川急便ら宅配大手と実験内容を協議しており、北海道では佐川が参加して今春までに第1弾の実験に取り組む見通し。地方部を走る新幹線の比較的余裕ある輸送力を活用して、収益につなげるのが狙い。新幹線物流の需要や課題を確かめ、1編成や1両単位での貨物輸送や貨客混載の可能性を探る。
貨客混載の実験は、JR北海道が新函館北斗―新青森、JR九州は博多―鹿児島中央で自社営業線内で完結。ともに列車内の業務用室に持ち込める程度の荷物を想定する。輸送する荷物は速達コストの負担力があり、鮮度が付加価値を生む生鮮品などを軸に、検討が進められている。
JR北海道は複数事業者と複数パターンの実証を計画する。「小さく産んで大きく育てる」(同社首脳)と当初からスケールアップも視野に、将来の青函トンネル貨物輸送における一つの選択肢として提供できるよう課題を洗い出していく。
JR九州は担当部署で年初から実証内容の検討を本格化。「使わなくなった車販室で始めて、できれば1両ぐらいやりたい」(同社幹部)とし、九州内の速達荷物需要を掘り起こして閑散時間帯の座席稼働率改善を目指す。
新幹線を使った荷物輸送サービスは「レールゴーサービス」の名称で国鉄が81年から展開。06年に東海道・山陽新幹線で取り扱いを終了し、現在はJR東日本グループのジェイアール東日本物流が東北新幹線の東京―仙台間、上越新幹線の東京―新潟間で1日各5、6往復設定している。レールゴーでは書類や工業部品、血液などの小型荷物を駅間輸送するとともに、バイク便との組み合わせでも提供する。
このほか、JR東日本は日本郵便との農産物トライアル輸送やJR東日本スタートアップの鮮魚輸送で新幹線を利用。“朝どれ品”の速達性を生かして、地域産品の高付加価値化にも取り組む。