JR横浜線町田駅のホームドア、共同開発の試金石に

「いつになったら、つくれるのだろうか」。瀧口製作所(東京都大田区)社長の古田茂樹は、はやる気持ちを抑えきれなかった。JR東日本グループとのホームドアの共同開発に合意したが、待てど暮らせど、JR東日本メカトロニクス(JREM)は試作に踏み切ろうとしなかった。 JREMは瀧口と組む前の2015年11月、展示会に試作機を出展していた。外観や動作はもちろん、フレーム形状のドアも専用のアルミ押し出し成形型材を用いるなどして強度の観点でも実用水準に近づけた。 問題は量産に際して、収益が見合うか。JREMの村木克行と瀧口の取締役新規事業部長の鷲見孝則の話し合いは続いた。目標は現行品比5割の軽量化、5割の低コスト化の両立。部品を自社内で製造する技術を持つ「コストダウンのスペシャリスト」を自負する瀧口でもハードルは高い。 穴一つ、曲げ一つもコストになる。図面をどう変えれば、同じ機能でも安く作れるのか。村木の持ち込む難題に鷲見たちは応え続けた。村木は「設計でコストの8―9割が決まる。どこで製作に踏み出すか見極めていた」と振り返る。 一方、瀧口としてみれば、多くの企業からの要請に現場のノウハウで応えてきたからこそ、肌感覚を重視する気持ちも捨てきれなかった。「つくってみて見えてくる課題もある」。 机上か現場か。ゴールは同じながらも両社の息が合わない時期もあったが、「遠回りかもしれないが必要な時間だった。その後、慌てることがなかった」と声をそろえる。過剰品質になりすぎないか、軽量化とコスト低減を両立させる加工はないか。数カ月にわたる長い“お見合い”を終えた後、高い山の頂に登る道は彼らには明確に見え始めていた。 その頃、試行導入の話が具体性を帯び始める。彼らは自らの仕事を過小評価していたことを思い知らされる。16年5月にJR東は横浜線町田駅で共同開発中のホームドアの実験を決める。1日の平均乗客数11万人を超える駅での試行決定に、メンバーの間には喜びよりも驚きが広がった。(敬称略) <関連記事>

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