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バス運転士に新卒高校生7人、免許取得まで3年待つ西鉄の覚悟

バス運転士に新卒高校生7人、免許取得まで3年待つ西鉄の覚悟

11月に研修センターで開いた「ドライバーズコンテスト」

西日本鉄道がバス運転士の不足と高齢化の解決策として高校生の新卒採用を進めている。「養成運転士」として2015年に採用を始めて5年。現在2期生までがハンドルを握り、乗客の輸送に活躍している。グループで約3000台を擁する国内最大規模の事業者として人材難を乗り越える。

 

「高校生の新卒からの育成は難しいという固定観念があった」と振り返るのは、西鉄自動車事業本部長の清水信彦取締役常務執行役員だ。バス運転士の採用は経験者中心でトラックドライバーからの転職者らを即戦力としてきた。だが物流業界自体がドライバー不足に陥り、人材獲得の状況は変化した。新卒には若返りの側面もある。西鉄バス運転士の平均年齢は40代後半。定年延長やシニア社員の制度もあるが、より長期で勤務してもらうには若手の存在は不可欠。そこで新卒高校生の「養成」に踏み切った。

 

これまで西鉄本体は13人を採用。バス事業での高校生採用は同社の長い歴史でも初の試みだった。とはいえ、すぐハンドルを握れるわけではない。大型2種免許の取得要件は21歳以上かつ普通免許取得から3年以上。最短で入社3年目まで待つ必要がある。そのため入社後は西鉄天神高速バスターミナル(福岡市中央区)に勤務し、接客や案内を通じてバス事業の経験を積む。1期生の藤野直紀運転士は、祖父と父に続き西鉄バス運転士となった“サラブレッド”。乗務まで「待ち遠しかった」が、ターミナル勤務は「乗務する中で接客に生かせている」という。

 

すでに1―2期生7人が路上に出ており、3期以降の6人は研修中。育成に時間は要するが「逆にレベルが高まっている」と清水本部長は評価する。ただ運転士不足の根本解決にはまだ遠い。「ドライバーズコンテスト」でモチベーションを高めるほか、女性の採用積極化や営業所の施設改善、拘束時間の短縮、人工知能(AI)による路線適正化などさまざまな取り組みを通じて地域交通の安定運行を守る。養成運転士制度はグループ内でも導入したほか、本体の採用枠も広げる考え。自動車本部担当者は「当社を引っ張ってくれる人材を今後も育成したい」と積極化していく構えだ。

(取材西部支社・三苫能徳)
日刊工業新聞2019年12月3日

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