関西の航空機産業は伸びしろが大きいぞ!「中部」への対抗策は?

動き出すプラットフォーム構想

 「関西航空機産業プラットフォームNEXT」が始動した。中堅・中小企業の新規参入や人材育成を通じ、航空機産業を活性化する。関西には大手メーカーの航空機関連の生産拠点が集積する。伸びしろは大きいものの、産業振興に力を入れる愛知県などに比べて出荷額は見劣りする。官民連携で底力を引き出し、地域経済成長の新たな推進力にする構えだ。  民間航空機の世界市場規模は年率5%伸び、今後20年で約6兆ドル(約660兆円)に膨らむ見通し。成長を取り込もうと、近畿経済産業局は5月に前身の「関西航空機産業プラットフォーム」を拡充し、同NEXTをスタート。新産業創造研究機構(NIRO)が事務局を担い、関西経済連合会と連携して金融機関を含む強固な支援基盤を築く狙いだ。  航空機産業の参入障壁は高い。初期投資が大きく、認証取得の難易度が高い。航空機のモデルライフは30年程度で長期安定供給の責任が求められる。  同NEXTは、欧米の完成メーカーから1次受注する川崎重工業や三菱重工業などエンジンメーカーや機体メーカーの下で、2次・3次受注として部品加工、熱処理、検査、塗装などを手がける中堅・中小企業を主な支援対象とする。成果も出始めており、その一つが「オープンマッチング」だ。  受注機会を広げる支援策で、発注企業がニーズを提示し、書面審査を経て応募企業への訪問や面談を行う。2016―18年度の累計面談は50社に上り、商談継続・成立は12社になった。  大きな課題は中核企業の育成だ。航空機産業のサプライチェーンは“ノコギリ型発注”がボトルネックとされる。重工業大手が工程ごとに各部品メーカーに発注しては引き取りを繰り返すため、所要時間の長期化や管理コストの増大を招いているとの指摘がある。  そこで重工業大手から一貫生産を受注できる中核企業の育成が求められている。中核企業が材料や部品を調達し、機械加工から熱処理、非破壊検査、表面処理などまで品質・コスト・納期を管理する。  例えば新明和工業では同社認定検査員資格を取得したサプライヤーであれば、次工程のサプライヤーに部品を直送することを認めた。これで新明和による中間検査の手間が省ける。航空機事業部の岡崎都史子資材部長は「今後は一貫生産を目指し、材料調達から最終検査までを中核となるサプライヤーに移管することを検討している」と明かす。  重工業大手にとってもサプライチェーンの高度化は待ったなしだ。機体メーカーやエンジンメーカーからの増産要請、コストダウン要請に応えるには、外注先を含めた生産性改革が不可欠となる。  川崎重工業は民間航空機用ジェットエンジン部品を手がける西神工場(神戸市西区)でロボットによる仕上げや独自の作業管理システムを活用し、工数削減や品質安定を実現。約10年間で生産性を60%向上した。同時に、技術が成熟した1次加工などは外注比率を増やすことで、設備投資を抑えながら増産要請に対応している。  川重の三島悦朗航空宇宙システムカンパニーエンジン生産本部長は「企業数を維持しつつ、加工品質の向上に力を注ぐ」と語る。川重から技術者を派遣し、生産や品質管理の高度化に取り組む。  大手の動きに呼応する形で、関西で航空機サプライチェーンはじわりと広がりを見せている。カルモ鋳工(神戸市西区)の高橋直哉社長は「航空機関連事業を成長の柱に位置付ける」と意気込む。従来の装備品や機体部品に加えて、このほど導入した大型マシニングセンターを活用し、年内にも航空機エンジン部品の加工に参入する。  鋼材卸を手がける能勢鋼材(大阪市旭区)は14年、航空機事業に進出。同事業で年間約8000万円を売り上げている。能勢孝一社長は「事業の幅が広がった。航空機事業で培った高い品質管理体制を従来事業にも生かしたい」と期待する。  電動化や軽量化など次世代技術にも追随しなければならない。「技術や市場が勢いづく欧州に先手を打つ」と話すのは伊福精密(神戸市西区)の伊福元彦社長。20年3月までにオランダに営業拠点を開き、欧州の航空機メーカーから直接受注を狙う。金属3Dプリンターを用いた装備品の試作で一定の評価を得られたため、情報収集や現地事業者との連携を進める。  うねりは出てきたが、近畿圏内の航空機産業の出荷額や製造業におけるシェアは自動車産業に比べて約10分の1にとどまる。現状では「仕事が一部の下請け企業にしか行き渡っていない」との嘆き節も聞こえる。  「行政による支援は年間約数千万円組まれるが、社内の人材育成や設備には毎年数億円規模で投資しなければならない」とさらなる支援拡充を求める声もある。単年度主義の予算では限界もあるが、行政も覚悟を決め、長期目線で取り組む必要がある。  関西における航空機産業の出荷額は16年に1740億円で全国シェアは8.4%。そのうち原動機の出荷額は790億円で14年比1.7倍になった。関西の中で出荷額は兵庫県が97.8%を占める。  同県は16年の出荷額と全国シェアが14年から順位を一つ上げ全国4位となった。ただ16年の出荷額は1位の東京都が5247億円、2位の愛知県は4561億円。現状、関西は他地域に劣るが、モノづくりの土壌を生かし着実な成長が期待される。 【新産業創造研究機構(NIRO)理事長、関西経済連合会科学技術・イノベーション委員会委員長・牧村実氏】 生産コストと品質に優れたサプライチェーンの構築、装備品への参入、将来技術への対応が主な課題だ。企業OBを中堅・中小企業に派遣し認証取得などを引き続き支援する。航空機全体で装備品が占める価値構成比率は4割だが、国内で装備品の占める生産額比率は1割程度。参入余地は大きい。軽量化や電動化など将来技術に今から手を打つ。 増産に対応するため、1次受注企業において製造方法が確立した部品を2次・3次受注企業に出し、空きスペースで新規ラインを設ける動きも加速する。世界と差別化できる難削材加工といった技術力を磨く必要がある。国際的なルール作りにも参画していかなければならない。関西は素材やバッテリー関連にも強みを持つ多様な企業が集積する。他地域と交流しながら潜在力を高めたい。(談) 【近畿経済産業局産業部長・西野聡氏】  近畿経済産業局では航空機産業支援を09年に始めた。当時日本の航空機産業出荷額は1兆1000億円。10年で2倍に伸びると見込まれ、関西としてもサプライチェーンを強化し、新機種への部品供給や新技術提案といったバリューを生み出せるかが課題だった。  これまでの支援を通じ、住友精密工業などの国内大手傘下で中核企業を育成し、中小のネットワークができた。兵庫県に航空産業非破壊検査トレーニングセンターを整備し、検査員の研修体制も整えた。一部では図面を渡せばセット部品を組み立てられるところまで来ている。  関西経済連合会の力を借り、大手の自発的な動きを期待する。関西は航空機だけでなく化学など多種多様な産業の集積が強み。中小のネットワークを充実させ、国内のみならず海外にセット部品を供給できるようになれば理想だ。(談) (取材=神戸・中野恵美子、大阪・大川藍)

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