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世界シェアが5%の日本の航空機産業でキラリと光るサプライヤー

ナブテスコが米ボーイングの最新鋭小型機向けに飛行姿勢制御システムを初出荷
ナブテスコは、米ボーイングの最新鋭小型機「737MAX」の量産機向けに、飛行姿勢制御システムを初出荷した。岐阜工場(岐阜県垂井町)で生産し、米ワシントン州のボーイング工場に納める。

 出荷したのは、飛行姿勢を制御する「スポイラー・アクチュエーター」と呼ぶ部品。737MAXは1月末に試験機が初飛行し2017年秋に初号機が引き渡される予定。

 ナブテスコはボーイングの「787」や「777X」、三菱航空機(愛知県豊山町の)「MRJ」などにもシステムを供給する。岐阜工場では16年秋の完成をめどに、部品製造と表面処理の2工場を建設中だ。

勃興・日の丸航空機


2015年9月3日


 日本の航空機産業が飛躍の時を迎えている。世界の旅客機数は今後20年で倍増すると予測され、企業は国産小型旅客機「MRJ」の開発や欧米向けの部品供給、自衛隊向け製品の海外輸出・民間転用で事業拡大に挑む。政府も航空機を自動車と並ぶ基幹産業に育てるべく、支援を加速する。一方、世界での競争は激化しており、コストに勝る新興国勢にシェアを奪われる懸念もある。”勃興“する航空機産業の今を追う。

 偉大なる下請け―。日本の航空機産業は長年、民間分野では欧米企業に航空機の機体やエンジン部品を供給してきた。米ボーイングが月10機ペースで製造する中大型機「787」では三菱重工業川崎重工業、富士重工業などが機体の35%、IHIなどがエンジンの15%を担う。

 ボーイングが2020年の初納入を目指す次世代大型機「777X」では機体の21%を日本が担当することが決定。エンジンではIHIが10―12%のシェアで参画する方向。ほかにも炭素繊維複合材をはじめとする素材の供給など、日本は航空機の中核部分に関わってきた。

構造的な弱点


 一方で構造的な”弱点“もある。機体やエンジン部品ではボーイング、欧エアバスの航空機製造に深くかかわるが、各種の装備品や内装品では存在感を発揮する企業が少ない。世界の装備品メーカーの売上高トップ100に日本企業は数社しかないとされる。

 機体の外側は作っていても、電子機器や油圧、配管系統といった”中身“にはほとんど参画できていない。ボーイングなどに各種センサーを供給する装備品メーカー、多摩川精機(長野県飯田市)の萩本範文副会長は「日本の航空機産業は”中抜け“構造だ」と警鐘を鳴らす。

中国の台頭


 機体が運用を開始した後の修理・整備(MRO)の工程も国内に取り込めていないのが現状だ。日本の大手航空会社も機体整備の5割前後は中国や台湾、シンガポールといったコスト競争力のあるアジアの企業に委託している。こうした状況に危機感を持ち、国も動きだした。

 「自動車に匹敵する世界シェアを目指すべきだ」。14年8月。自民党の航空産業小委員会は今後の航空機産業に関する提言を発表した。提言には、航空機産業を基幹産業の一つとすべく、世界シェアを30年代早期に自動車と同じ15―20%に引き上げるという高い目標が盛り込まれた。

産業振興、法制化の動き


 14年度の日本の航空機産業の生産額は1兆7000億円弱。ここ数年間で大幅に伸びたが、世界シェアは5%前後にとどまる。シェア目標を年間生産額にすると7・5兆―10兆円。現在の4―6倍だ。与党の中には提言と連動し、航空産業の振興を法制化しようとする動きも出てきた。

 政府はこれまで「年間生産額3兆円」を目標に掲げてきたが、与党提言を受けて経済産業省など関係7省庁で新しいビジョンの策定に着手。今秋にも公表する方向だ。

 与党提言のような大幅なシェア拡大を達成するためには、付加価値の高い装備品産業の育成といった、新たな領域への取り組みが求められる。基幹産業化に向けた動きは、すでに始まっている。
日刊工業新聞2016年2月19日航空機面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ナブテスコは老舗だが、最近、新聞の記事でも航空機事業へ新規参入するという中堅企業の話も多い。自動車のようにボリュームがあるわけではなく、しかも納期までの時間も長い。クラスターによる「共同受注」や「部品一貫生産」などの動きにも期待。

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