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この春、チェキで、写真を撮ろう 〜プロのエモい作例 15点掲載〜

アナログのよさ・楽しさ追求した商品コンセプトと、いい写真が撮れるコツを紹介
撮影してその場で即プリントして楽しめるインスタントカメラ、富士フイルムの「インスタックス(日本での愛称がチェキ)」。今、販売台数を伸ばし続けています。1度目のピークが2002年度の100万台だったのに対し、2018年度は世界で1000万台を見込んでいます。

 デジタル端末などで写真が簡単に撮影・共有できる今、なぜ、アナログカメラのチェキが多くの人に受け入れられているのでしょう。イメージング事業部インスタント事業グループマネージャー高井隆一郎さんに、チェキのブランドメッセージやいろいろな機種の商品コンセプトを聞きました。

 記事の後半からは、正方形の写真「スクエアフォーマット」でいい感じの写真を撮るコツを、作例を交えながら少し紹介します。

 今回はチェキという「カメラ」への取材。作例だけでなく、記事中のカット写真も全てチェキで撮ろうと思い至りました。撮影をお願いしたのはプロカメラマン坂祐次さん。

チェキのmini90を構える坂さんをmini70で撮影

 プロとはいえども、撮り慣れていないカメラで苦労が多かったようですが、この企画を面白がっていただき素敵な写真をたくさん撮っていただきました。
【聞き手・平川透、写真・坂祐次(プロフィールは記事末)】

アナログのよさって何だろう?


—なぜチェキは販売台数を伸ばしているのでしょうか?

 デジタル化やオンライン化が進めば進むほど、チェキのユニークさが際立ちます。技術トレンドにそのまま迎合していないことが、逆に新しさを生み出しているとも言えます。

—デジタルがアナログにかなわないものがあるとすれば、何だと思いますか?

 「リアリティ」。バーチャルに対してリアルなモノは触れられるじゃないですか。人間が感性を持ち続ける限り、「ものがある」「質感がある」「触れる」というのは重要な要素だと思うんです。

 リアルなチェキプリントを使ったコミュニケーションを通じて、「目の前の大切な人やモノと向き合うことに背中を押してあげるような存在であり続けたい」と思っています。

SQ20で撮影

 今取材で話をしている時に、画面を通して何かを見せるのではなくて、「はい、どうぞ」とチェキプリントを手渡しすることができたり、プリントの余白部分に「よろしくお願いします」「今日はありがとうございました」などと文字を添えて渡したりすることができる。こういったダイレクトなコミュニケーションは、Eメールやチャットとは違うよさがあります。

「mini8」はファッションカメラ、とにかく簡単に使える


—毎年新商品が出ています。各新商品を出す時の基本的な考え方を教えてください。

 その時代が求める価値を考えて商品を出しています。時代時代でユーザーの写真の捉え方や、ユーザーの周囲にあるエンターテインメントが変わります。商品化までには1、2年かかりますので、先を読んだ商品開発が重要です。

 instax mini8という商品を2012年に出しました。インスタントカメラをファッションカメラに捉え直し、ファッションの一部として女性がオシャレに持てることを重要視しました。原宿をベースとしたスタイル、雰囲気を取り入れました。個装箱も原宿っぽいデザインを意識しています。

SQ20で撮影

 ボディの色も、いわゆるカメラっぽい色ではなくて、カラフルなカラーバリエーションを5色用意し、好きな色を選んでいただけるようにしました。また、インスタントカメラの機能として重要なところなのですが、「簡単に使える」ことを徹底しています。

こだわって撮れる「mini90」


 2013年に発売したinstax mini90は、主に男性を意識した商品です。一目でmini8+とは異なる雰囲気のデザインに仕上がっていることがわかると思います。だからといって、女性に人気がないわけではなく、クラシックな風合いが好きな方に非常に好評です。

SQ20で撮影。フイルムはinstax SQUARE Film BLACKを使用

 機能面では、mini8+のように使いやすくてシンプルなものからもう少し充実させていて、二重露光やバルブなど、撮ることにこだわりを持つ方も楽しめる商品です。

mini90の「二重露光」モードで撮影

二重露光モードでは、フイルム1枚に対して、シャッターを2回切ることができます。上の写真ような構図でうまく撮るコツは、1回目の露光で明るい背景で手前に影を設けます。そうすると2回目の露光の時に影の部分が綺麗に写ります。この写真では、まず青空に手をあげて腕の影を作りました。2回目の露光で花を撮りました。(坂祐次)

 mini70(写真下)は「“撮ル”をあそぼう。」がタグラインなのですが、こちらは大人が気軽に持ち歩けるようなスポーティなデザインにしています。露光の改善を施し、背景がより綺麗に写りやすくなりました。

SQ20で撮影

まず動画で撮って、後からお気に入りの1コマを選べる「SQ20」


 2018年に出したinstax SQUARE SQ20は、デジタル技術を搭載したハイブリッドインスタントカメラの2代目になります。もともと2017年に1代目のSQ10を発売しています。SQ10が初めてのスクエアフォーマットに対応したカメラでした。

 SQ20の大きな特徴は、背面液晶や動画撮影機能などのデジタル技術を盛り込んでいることです。デジタルのいい部分を取り入れた「ハイブリッドカメラ」ですが、チェキらしさを意識したデザインや仕様を備えた一台です。

SQ6で撮影

 SQ20は、「動画技術をインスタントカメラに組み込み、今までのインスタントカメラでは難しかった撮影を出来るようにすること」が商品開発のポイントでした。

 動きのある被写体を撮影する場合、アナログのカメラはシャッターチャンスを逃したり、ブレたりするじゃないですか。それはそれでよさでもあり、そのような写真を好む方も多いのですが、シャッターチャンスをちゃんと捉えている写真を選んでプリントしたいという方のニーズやペットやお子さんなど動き回る被写体のベストショットをプリントしたいというニーズに応えるために、動画で一通り撮って、後からお気に入りの1コマを選べるようにしました。

 その機能が商品の一つのポイントなのですが、スマートフォンみたいなタッチパネル操作でのシーン検出だといかにもデジタル。SQ20は背面の中央にある丸いダイヤルをくるくると手で回してベストショットを選択します。そのような「手を動かして操作する」アナログ要素をデザインの随所に入れています。

「SQ6」のカラーフィルターは独特な色合いと立体感を演出


 SQ20と同年に出したSQ6は、付属のカラーフィルターがあります。ストロボにカラーフィルターをはめて撮影します。レンズにカラーフィルターをはめる場合と色合いが全然違うんです。光の当たる距離によって、色が変わるからです。近い距離のものはフィルターの色が濃く、遠いと薄くなり、立体感が増します。

SQ20で撮影

左の写真がSQ6。右の写真ではフラッシュの発光部に付属のカラーフィルターを装着しています。色は緑をつけていますが、室内の照明の具合で青っぽく写っています。(坂祐次)

 紫、赤、緑の3色を用意していますが、ここまで絞るためにものすごい種類の色を検討しました。1つのフィルターに3つや4つの色を配置したりもしました。より面白い表現ができるということで、この3色になりました。

SQ6で撮影

SQ6付属のカラーフィルターを装着して撮影しました。ちょっと不思議な雰囲気を醸し出せます。(坂祐次)

いい写真を撮るコツ


—スクエアフォーマットは今の時代とも合っているように思いますが、いい写真を撮るコツがありますか?

 「おすすめの撮影構図7パターン」を公開しています。初めてチェキで撮影する方でも、「このような考え方で撮ると面白い写真が撮れますよ」というヒントを載せています。SNSが盛り上がっている今は、「自己表現の時代」とも言われていますよね。表現の幅を広げるヒントにしていただければと思い公開しました。

 まずは、「日の丸構図」。真ん中にどーんと被写体を置いて撮るというものです。

*以下、作例の撮影者は全て坂祐次さんです。

SQ20で撮影

背景と明暗差のある被写体を真ん中に入れて撮ると、暗い部分がより暗くなり、被写体を引き立てます。色が明るい花と濃い緑の葉は、光の反射率大きく違います。花が綺麗な明るさになる様に、状況によって、SQ20に搭載されているLやDの撮影モードボタンを使って調整すると、花だけが浮き上がって写ります。(坂祐次)

 次に「ラインレイアウト」です。斜めや水平に線を引くような構図です。

SQ6で撮影

テーブルの向こうには庭園。(坂祐次)

SQ6で撮影

直線的なラインの構図ですが、「日の丸」との組み合わせでもあります。あえて小さな日の丸。(坂祐次)

SQ6で撮影

SQ6で撮影

レインボーブリッジのお台場側の歩道から撮影しました。SQ6の撮り直しのきかない緊張感が心地よい。(坂祐次)
 そのほか「余白を活かしたレイアウト」「シンメトリー構図」などを紹介していますのでぜひご覧ください。

*高井さんのお話はここまでです。

その他の作例と撮影のコツ


SQ6で撮影

ローアングルで砂場を撮りました。空と地面が半分になるような構図で手前の砂場を強調。(坂祐次)

SQ6で撮影

スクエアフォーマットならではの余白を生かした構図です。(坂祐次)

SQ20で撮影

左はSQ6で、右はSQ20で撮影

スレーブユニットを取り付けた一眼レフ用のフラッシュをチェキのフラッシュと同調させ、人物のサイドからカラーフィルターを付けて青い光を当てています。プロはもちろん、コスプレイヤーが多用するテクニックの一つです。(坂祐次)

mini70で撮影

柔らかい横顔のラインと無機質な直線美を対比させました。(坂祐次)

モデルはインターンの狐塚真子さん。取材の準備から編集、公開に到るまで色々なアイデアを出していただきました。(平川透)

mini90で撮影

打ちっ放しのコンクリートの質感を活かして撮影しました。あえて人物の配置を真ん中から外した方が、ストーリー感が出ます。(坂祐次)

【取材後記】
 2012年から毎年、色々なアイデアを取り入れながら新商品が出ています。「毎年新商品が出ていますから、やっぱり今年も出るんですよね?」と高井さんに聞きましたが、「そうなんですか?」と返されてしまいました。やはりその辺りはトップシークレットです。次の新商品がいつ出るのかは現時点ではわかりませんが、「目の前の大切な人やモノと向き合うことに背中を押してあげるような存在であり続けたい」というメッセージのもと、どのようなアイデアが盛り込まれた商品が世に出るのか楽しみです。

高井 隆一郎(たかい・りゅういちろう)
2001年入社。2004年にイメ―ジング海外営業部で海外業務経験を積み、2009年から8年間ドイツ駐在。現在インスタント商品の企画・マーケティングを統括。

坂祐次(さか・ゆうじ)
1970年、東京生まれ。撮影スタジオ勤務を経てフリーに。撮影以外にトレイルランニング雑誌「RUN+TRAIL」に文章を書くことも。キャンプしながらの飲酒が至福の時。
作品→https://500px.com/yujisaka
Twitter→ @yujis_cam
後日、「机に足を乗っけてすいませんっ!」と坂さん。
ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
今回の取材にあたり機材の貸し出しなど手厚いサポートをしていただいた広報の角皆枝里さんに感謝申し上げます。僕自身写真が好きなので、ただただ楽しい取材・編集でした。いつもの一人で行う取材と違い、カメラマン坂さんとインターンの狐塚さんと議論しながら作っていきました。お二人の多面的な視点やアイデアによって、自分一人では到底できなかった充実した記事にできたように思います。

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