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スズキの2輪事業は危機を脱したのか

50cc原付きバイクの自前開発・生産を継続も…
スズキの2輪事業は危機を脱したのか

スズキの原付バイク「レッツ」(スズキ公式ページより)

 2017年度の4輪車世界販売が前期比約15万台増の307万1000台と初の300万台超えを狙うスズキ。一方、赤字の2輪車事業について鈴木修会長は「危機は脱した」と話す。ホンダヤマハ発動機が提携した排気量50cc原付きバイクについても、スズキは自前での開発、生産を続けるという。

 ホンダとヤマハ発動機という日本の2輪車業界大手2社が生き残りに向け動きだしたのが昨年。排気量50ccのスクーターなど原付一種事業で業務提携に向け検討を始めた。

 主な内容は「ヤマハ発へのスクーターのOEM(相手先ブランド)供給」「商用スクーターの次期モデルの共同開発とヤマハ発へのOEM供給」「原付一種の電動2輪車の普及に向けた協業」の3点。一刻も早い事業の着手に向け、プロジェクトチームを立ち上げて協議を進めている。

 日本自動車工業会の調査によると、国内の原付一種の販売台数は80年が197万8426台だったのに対し、2015年は19万3842台と1割未満にまで減った。軽自動車など近距離交通手段の多様化や、高校生に免許を取らせない、買わせない、乗らせない、というバイクの『3ない運動』など規制強化などが要因だ。

 原付一種は日本の全2輪販売台数の5割以上を占めており、バイクライフのエントリー機種とされる2輪市場を再び盛り上げるためにも火を絶やすわけにはいかない。原付一種は日本と、欧州の一部の国のみで乗られている車種。

 ヤマハ発動機の柳弘之社長は、トヨタ自動車とスズキが提携検討を始めた際「競争と協調。そういう時代になったということだと思う」とコメントしたが、原付一種でも同様の認識を持っている。

 一方のスズキは昨年、マレーシアでの2輪車の製造から撤退した。赤字が続く2輪車事業の構造改革の一環で、「アジア全体で集約を検討する」(同社幹部)としている。

 スズキのアジアの2輪車製造拠点はインドネシアやタイ、ベトナム、中国などにある。2輪車事業の黒字化は中期経営計画の一丁目一番地。鈴木俊宏社長は19年度を最終年度とする同計画について「順調。社内の連携を強化し活性化させたい」と強調するが、2輪事業についてはさらなる構造改革が欠かせない。

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最高峰で日本でもブランドイメージを


「GSX―R1000R」

 スズキはスーパースポーツバイク「GSX―R1000R」を28日に発売する。シリーズの最上位モデルで、初めて日本仕様を設定した。レース活動で培った最新技術をフィードバックし高出力と高い操縦性能を実現した。価格は204万1200円(消費税込み)。国内で年間240台の販売を見込む。

 新開発の排気量999cc直列4気筒エンジンを搭載。2輪車レースの最高峰、モトGPの技術を取り入れた新機構「ブロードパワーシステム」により、高回転域での出力向上と低中速域での出力を両立した。

 同社2輪車で初めて電子スロットルを採用。ライダーの好みやスキルに合わせて10種類のモードからトルク制御の介入レベルを選択できる先進技術も搭載した。同モデルは欧米を中心に展開してきたが、ブランドイメージの確立を狙いに日本仕様を設定し、市場投入する。

日刊工業新聞2017年7月17日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
冒頭のスズキの鈴木会長の発言をどう読むか。したたかな鈴木会長だけに、50cc原付きバイク事業についても、まだサプライズがあるかもしれない。

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