女子高生の学園アニメ「ばくおん!!」がバイク離れに歯止めをかける?
8月19日は「バイクの日」、各メーカーがタイアップであの手この手
女子高生が仲間と一緒にバイクライフを過ごすというストーリーのアニメ番組「ばくおん!!」が4―6月、東京地区で放映された。これに目をつけたのが2輪メーカーや関連企業、団体。主な視聴者層の若者がバイクに興味を持つきっかけになるとみて、タイアップイベントや販促キャンペーンを展開している。若年層の需要掘り起こしが課題の国内2輪業界で、さまざまな策を講じて現状打破に力を入れている。
ばくおん!!は、主人公の女子高生がある出来事をきっかけにバイクに興味を持つことから始まる。同級生とともにバイク部に入部し、仲間に支えられながら2輪免許を取得してバイクライフを楽しむストーリーの学園コメディー。登場人物の愛車は実在する車種で、日本の2輪メーカー4社などがあらゆる面で協力。業界団体も製作に協力した。
力を入れる背景には若者のバイク離れがある。日本メーカー4社の2輪車の国内販売台数の合計は1982年の約328万台をピークに減少し、15年は約37万台だった。2輪車の需要台数も、99年度に85万6000台と100万台を割って以降漸減傾向で、現在は40万台レベルだ。
日本自動車工業会(自工会)の15年度「二輪車市場動向調査」によると、2輪車ユーザーの年齢構成では50―70代以上で全体の6割以上に達し、一方30代以下は2割以下。若年層のバイク離れが進んでおり、新たな需要の掘り起こしが課題となっている。
各業界団体や企業はコラボレーションに力を入れている。自工会と日本二輪車普及安全協会(二普協)が主催するイベント「『バイクの日』スマイル・オン」。21日11―16時に、ベルサール秋葉原(東京都千代田区)で開く同イベントで、出演声優によるトークショーを開く。
このイベントは、バイクの日である8月19日近辺に、交通安全の啓発とバイクの知名度向上を目的に実施している。二普協は14年からバイクライダーのマナー向上活動を展開しており「バイク需要の掘り起こしも含め、タイアップでより広い層への訴求効果が期待できる」(担当者)。
バイク買い取りサービスなどを展開するバイク王&カンパニー(東京都港区、石川秋彦社長)は、6月にタイアップ企画をスタートした。第1弾は千葉県のサーキットでミニイベントを開催。ステッカー配布やキャラクターの等身大パネルと実車の記念撮影会を実施した。
第2弾ではキャラクターが出演するラジオCMを放映。現在は第3弾として、関東6店舗を舞台としたスタンプラリーを28日まで開き、6店舗のスタンプを集めるとオリジナルポスターをプレゼントする。
同社は前からバイク試乗会などを開催してきたが、参加者は40―50代が中心だったという。6月に開いたイベントは参加者の40%以上が20代で「若者との親和性の高さを実感した」(同)。
ブリヂストンは7月、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開かれた2輪車レース「鈴鹿8時間耐久ロードレース(8耐)」で、コラボイベントを初開催した。現地では交通安全宣言を書いたメッセージカードをボードの指定箇所に貼り、約150枚集まると一つのパズルアートが完成するコンテンツを用意。3日で一つ完成の想定だったが、1日でできあがる人気ぶりで、カードを求める列が絶えなかったという。
出演声優のトークショーも実施し「どれくらいのお客さまが集まるか不安だったが、ふたを開けたら人気が高かった」(担当者)と、効果を実感している。
バイクメーカーもさまざまな施策を展開している。ホンダは、スマートフォン用アプリ「ホンダモトリンク」の利用紹介パンフレットを「ばくおん!!」とタイアップして製作。2輪販売店「ホンダドリーム店」で限定配布し、来店促進に生かしている。
ヤマハ発動機は、若年層向けに開発したスポーツバイク「MT―25」のホームページにおけるプロモーション展開にキャラクターを採用し、8耐でも出演声優によるトークショーを実施。補修部品の販売子会社が実施するイベントでのステッカー配布も予定する。
川崎重工業は企業ミュージアム「カワサキワールド」(神戸市中央区)で2月に実施した「カワサキモーターサイクルフェア」で特別展を実施した。スズキは現時点でタイアップなどを考えてはいないが、「アニメがきっかけでバイク人口が増えたらいい」とした。
市場活性化のためには、タイアップの他にも「若い人が魅力を感じるニューモデルの投入や免許のない人が実車に触れたり、クローズドコースで試乗できたりするような体験機会の開催が重要」(川崎重工業)、「若年層が、ライダーをはじめるに当たって直面するハードルを下げる施策が必要」(ヤマハ発動機)、「バイクが有用な乗り物として活用してもらえるよう、業界一丸となってさらなる啓発活動を展開するべきだ」(ホンダ)と、打開すべき課題は多い。
だが「ばくおん!!」が状況好転の一つの鍵になっているのは確かだ。バイク王&カンパニーやヤマハ発動機、ホンダは、今後も積極的なコラボレーションを予定。需要をより掘り起こす考えだ。
(文=山田諒)
ピーク時の9の1、若年層の需要掘り起こし課題
ばくおん!!は、主人公の女子高生がある出来事をきっかけにバイクに興味を持つことから始まる。同級生とともにバイク部に入部し、仲間に支えられながら2輪免許を取得してバイクライフを楽しむストーリーの学園コメディー。登場人物の愛車は実在する車種で、日本の2輪メーカー4社などがあらゆる面で協力。業界団体も製作に協力した。
力を入れる背景には若者のバイク離れがある。日本メーカー4社の2輪車の国内販売台数の合計は1982年の約328万台をピークに減少し、15年は約37万台だった。2輪車の需要台数も、99年度に85万6000台と100万台を割って以降漸減傾向で、現在は40万台レベルだ。
日本自動車工業会(自工会)の15年度「二輪車市場動向調査」によると、2輪車ユーザーの年齢構成では50―70代以上で全体の6割以上に達し、一方30代以下は2割以下。若年層のバイク離れが進んでおり、新たな需要の掘り起こしが課題となっている。
各業界団体や企業はコラボレーションに力を入れている。自工会と日本二輪車普及安全協会(二普協)が主催するイベント「『バイクの日』スマイル・オン」。21日11―16時に、ベルサール秋葉原(東京都千代田区)で開く同イベントで、出演声優によるトークショーを開く。
このイベントは、バイクの日である8月19日近辺に、交通安全の啓発とバイクの知名度向上を目的に実施している。二普協は14年からバイクライダーのマナー向上活動を展開しており「バイク需要の掘り起こしも含め、タイアップでより広い層への訴求効果が期待できる」(担当者)。
イベントで効果、若者との親和性実感
バイク買い取りサービスなどを展開するバイク王&カンパニー(東京都港区、石川秋彦社長)は、6月にタイアップ企画をスタートした。第1弾は千葉県のサーキットでミニイベントを開催。ステッカー配布やキャラクターの等身大パネルと実車の記念撮影会を実施した。
第2弾ではキャラクターが出演するラジオCMを放映。現在は第3弾として、関東6店舗を舞台としたスタンプラリーを28日まで開き、6店舗のスタンプを集めるとオリジナルポスターをプレゼントする。
同社は前からバイク試乗会などを開催してきたが、参加者は40―50代が中心だったという。6月に開いたイベントは参加者の40%以上が20代で「若者との親和性の高さを実感した」(同)。
ブリヂストンは7月、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開かれた2輪車レース「鈴鹿8時間耐久ロードレース(8耐)」で、コラボイベントを初開催した。現地では交通安全宣言を書いたメッセージカードをボードの指定箇所に貼り、約150枚集まると一つのパズルアートが完成するコンテンツを用意。3日で一つ完成の想定だったが、1日でできあがる人気ぶりで、カードを求める列が絶えなかったという。
出演声優のトークショーも実施し「どれくらいのお客さまが集まるか不安だったが、ふたを開けたら人気が高かった」(担当者)と、効果を実感している。
バイクメーカーもさまざまな施策を展開している。ホンダは、スマートフォン用アプリ「ホンダモトリンク」の利用紹介パンフレットを「ばくおん!!」とタイアップして製作。2輪販売店「ホンダドリーム店」で限定配布し、来店促進に生かしている。
ヤマハ発動機は、若年層向けに開発したスポーツバイク「MT―25」のホームページにおけるプロモーション展開にキャラクターを採用し、8耐でも出演声優によるトークショーを実施。補修部品の販売子会社が実施するイベントでのステッカー配布も予定する。
川崎重工業は企業ミュージアム「カワサキワールド」(神戸市中央区)で2月に実施した「カワサキモーターサイクルフェア」で特別展を実施した。スズキは現時点でタイアップなどを考えてはいないが、「アニメがきっかけでバイク人口が増えたらいい」とした。
打開すべき課題は依然多く
市場活性化のためには、タイアップの他にも「若い人が魅力を感じるニューモデルの投入や免許のない人が実車に触れたり、クローズドコースで試乗できたりするような体験機会の開催が重要」(川崎重工業)、「若年層が、ライダーをはじめるに当たって直面するハードルを下げる施策が必要」(ヤマハ発動機)、「バイクが有用な乗り物として活用してもらえるよう、業界一丸となってさらなる啓発活動を展開するべきだ」(ホンダ)と、打開すべき課題は多い。
だが「ばくおん!!」が状況好転の一つの鍵になっているのは確かだ。バイク王&カンパニーやヤマハ発動機、ホンダは、今後も積極的なコラボレーションを予定。需要をより掘り起こす考えだ。
(文=山田諒)
日刊工業新聞2016年8月18日