「物流の2024年問題」の解決策…NTTデータが提案、プラットフォームの全容
NTTデータは物流の停滞が懸念される「物流の2024年問題」の解決策として「中継輸送最適化プラットフォーム(基盤)」を提案する。貨物を各地の倉庫事業者の拠点で積み替えて、異なる運送事業者の複数のトラック運転手が一つの長距離輸送を分担する構想だ。輸送関連データを集約して最適な中継輸送を導き出すシステム基盤をNTTデータが構築・提供する。中立的な立場で物流業界全体をつなぎ、持続可能な物流を目指す。
物流業界では4月から適用されたトラック運転手の時間外労働の上限規制により、一人の運転手による長距離輸送が難しくなった。人材不足が課題となる一方で、同社の推計によると運転手の労働時間の約2割は荷待ちや荷役、付帯作業など運転以外の業務が占める。
運賃は荷物の重量と輸送距離を基にした「トンキロ法」で計算し、運送事業者の労働時間が加味されない場合も多いが、企業間輸送の市場規模の約4分の3は従業員300人以下の中小の運送事業者が担っている。荷主の立場が強く、輸送全体の効率性が犠牲になる側面もある。
これらの課題解決にNTTデータが提案する「中継輸送最適化プラットフォーム」は、全体最適の視点で物流資源を有効活用する。輸送依頼データやトラック、倉庫の空き情報などを基に最適化計算を行い、複数の運送事業者が複数拠点間で荷物を積み替えて中継輸送を行うモデルを構想する。運賃は輸送条件の最適化への貢献度合いにより変動する「ダイナミックプライシング」を想定する。
同構想では複数の倉庫事業者で構築したネットワークが中心となり、運送事業者に中継輸送を指示するほか、倉庫を中継地として積み替え時の荷役作業を提供。荷量調整に必要な貨物を提供できる倉庫に配車することで復路便の積載率も上がる。現在、物流の総合積載率は40%を切るが、NTTデータは量子コンピューターによる最適化計算で総合積載率を10―30%改善できる算出結果も得た。
同プラットフォームの実現に向けて、7月から三井倉庫ロジスティクス(東京都中央区)と共同で最適化モデルに関する机上検証を始めた。
NTTデータコンサルティング事業本部サステナビリティサービス&ストラテジー推進室の南田晋作室長は「運送事業者全てが元請けになり、多重下請け構造が解消できるプラットフォームを作りたい。物流業界全体の最適化と持続可能な物流を目指す」と意気込む。(熊川京花)