不要資産売却の反動が影響…NTTの通期見通し、増収営業減益
NTTの2025年3月期連結業績予想(国際会計基準)は増収営業減益とした。不要な土地など非中核資産の売却を進めた結果、24年3月期に約1000億円の利益を上積みした。今期はその反動が出るうえ、NTT東日本、NTT西日本が担う固定電話の契約数がさらに減少する。一方でNTT東西の稼ぐ力を復活する基盤作り、海外や医療での新しい枠組みが動き出す。「いったんしゃがんでジャンプする」(島田明NTT社長)ための年となる。
非中核資産のうち再開発可能な案件は、傘下のNTT都市開発が手がけた。一方、無線ルートの縮退に伴う使用計画のないNTT東西の廃止無線中継所、NTTドコモとNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の統合による資産効率向上で不要になった通信局舎などの建物を撤去して更地にし、24年3月期までに売却した。島田社長は「その反動が出て(25年3月期の)営業利益が1000億円程度減る」と話す。
25年3月期のNTT東西の固定電話契約数(加入電話とINSネットの合計)は前期比7・9%減の約1146万の見通し。光回線サービス「フレッツ光」と他社に光回線を卸す「コラボ光」を含む契約数は同0・4%増の約2375万と、ほぼ横ばいと予想する。「(NTT東西の主力サービスの)環境がいろいろ厳しくなっている」(島田社長)状況の中、メタル電話からひかり電話への移行促進や業務システムの内製化、電話帳サービスのデジタル化などを進め「25年3月期を底に増益基調に転換させる」(渋谷直樹NTT東社長)戦略だ。
一方、次の成長に向けた基盤作りも進める。NTTグループのメディカル・ヘルスケア事業の資産を結集した新会社「NTTプレシジョンメディシン」を7月に発足する。医療機関との連携を通じてメディカルデータを生成・収集し、製薬企業へのデータ流通を加速。次世代の治療法の研究開発を支援する。
稼ぎ頭のNTTドコモはグループ各社の国際事業を統括する新会社「NTTドコモ・グローバル」を7月に設立し、デジタル基盤や無線アクセス網を用いた海外事業の拡大に挑む。
このNTTドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTデータグループは6月に社長交代する。「3社の新社長はいずれも50代。新しい世代に次の戦略を担ってもらう」(島田社長)ことで28年3月期までの5カ年中期経営計画の目標達成を目指す。