溶融し建築資材に再資源化…新日本電工、焼却灰の処理能力7割増
新日本電工は自治体から引き受けた廃棄物焼却灰の処理能力を、2030年までに現状比7割増の年22万トンに高める。27年に5基目となる焼却灰の溶融専用炉を新設するほか、30年にかけてさらに2基設置する方針。焼却灰の埋設場の確保に苦戦する自治体からの需要増に対応するとともに、焼却灰資源化事業の拡大につなげる。
新日本電工は自治体から廃棄物の焼却灰を引き受け、再資源化する事業を展開している。現在は茨城県鹿島市で溶融炉4基を稼働しており、30年までに現状比で3基増やし7基体制にする。投資額は「数十億円規模になる見通し」(青木泰社長)だ。
焼却灰は1500度Cで溶融し、無害化した上で金、銀などを含む有価金属「溶融メタル」を抽出するほか、建築・土木用資材などで使える「溶融スラグ(エコラロック)」に再資源化する。
焼却灰を埋設場に埋め立てる必要がなくなるほか、再資源化により、二酸化炭素(CO2)の排出量削減など環境負荷の低減につながる。現在、全国の市町村や一部事務組合の計94団体と取引する。焼却灰の収集量は年8万4000トンに上る。
環境省によると、全国で発生する一般廃棄物焼却灰の発生量は年420万トン。このうち約7割が埋設処理されており、再資源化は3割程度にとどまる。今後、焼却灰を含めた廃棄物の埋設処分場の残余容量が減少することが想定されており、資源化する需要の拡大が見込まれている。
新日本電工は焼却灰の引き取りニーズに対応するとともに、有価金属回収とスラグの再資源化を推進。サーキュラーエコノミー(循環経済)の推進に貢献したい考えだ。また、焼却灰事業の強化に向け1日付で同事業を担う中央電気工業(茨城県鹿島市)を吸収合併した。同事業を成長事業と位置付け、事業戦略のスピード化と規模拡大を目指す。
日刊工業新聞 2024年07月08日