原発立地の大熊町は復興公営住宅に…福島でZEH普及進む
福島県でネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)が普及している。日本の新築建売住宅では、ZEHが2022年度で23%程度になり、積水化学工業は新築住宅の94%がZEHだ。福島県では東京電力福島第一原子力発電所が立地する大熊町がゼロカーボンのまちづくりを掲げ、ZEH住宅新築が進む。いわき市ではスマートタウンに向けZEH化が動き出すなど面的利用も具体化してきた。(いわき・駒橋徐)
ZEHは高断熱性能と創エネルギー、蓄エネルギー、省エネルギー設備機器を組み合わせて導入し、年間1次エネルギー消費量がネットゼロの住宅だ。太陽光発電をベースに新築戸建ての建売住宅で、住宅メーカーを中心にZEH普及が進む。
ZEHは太陽光発電(PV)を中心に創エネルギーが基本だ。住宅メーカーの分析では、5キロワット以上のPV導入でZEHを実現しやすくなる。
積水化学は販売住宅の大半をZEHにすることを実現。23年度上期の新築住宅の実績では、PV導入率91%、年間でのZEH導入率は94%になる。日本の住宅メーカーのZEH比率は平均61%、一般工務店は10%台だ。
積水化学はZEH化で、PVの累積導入量は23万8000棟(約125万キロワット)に、蓄電池は6万件以上になる。PVの電気は売電から自家消費に切り替える時期にきており、蓄電池の導入は増えてきている。積水化学の住宅の蓄電池導入率は23年度上期に87%だ。
電気自動車(EV)と家庭のPVとの充放電システムであるビークル・ツー・ホーム(V2H)も期待される。住宅購入者が1台のパワーコンディショナーでPV、蓄電池、V2Hと接続できるトライブリッド型で、定置型蓄電池を採用し、自家消費型住宅のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を見据えて取り組む動きだ。
福島県ではZEH立地が進む。福島第一原発事故で住民の避難が続く大熊町では、新設した復興公営住宅で50戸がZEHを実現、トライブリッド型を導入した。ZEHを面的に広げ、まちづくりを推進していく事業も始まる。
いわき市ではスマートタウンに向け、住宅大手6社と地元企業が計277戸のZEHを具体化する計画だ。福島県以外でも、積水化学が群馬県太田市の分譲住宅(165区画)にZEHを面的に導入した。
今後は既存住宅のZEH化が大きな課題だ。ZEH導入がさらに拡充することが、カーボンニュートラルへの貢献と高いレジリエンス(復元力)機能を実現させる。