住宅新築着工減続くものの…大手メーカーの業績が好調な理由
ZEH・改修再販など好調
注文住宅の着工減小が続いている。国土交通省の住宅着工統計によると、個人が居住目的のために建築する「持家」の10月の新設着工戸数は前年同月比17・2%減の1万8078戸。23カ月連続で前年を下回った。人口減少に伴い長期的に新設住宅着工の減小は予測されていたが、最近は住宅ローン金利の上昇や相次ぐコスト高により住宅価格が上昇し、減少率が大きくなっている。
住宅生産団体連合会(住団連)会員企業の経営者は「展示場来場者減・部資材価格高騰の影響で受注マインドは回復に至らず」とコメントする。建材メーカーはエネルギーや原材料高騰を理由に2022年ごろから価格改定を重ねてきた。さらに、建設業や物流業では時間外労働に上限規制が適用される「2024年問題」への対応が次の課題として迫っている。建材メーカーのLIXILは輸送を効率化するため有料道路を増やすなどの理由で、24年4月受注分から値上げする。ただ、残業時間規制に伴う納期や工期の長期化も予想されるため、人件費などのコスト高は今後も続くと見られている。
こうした中でも大手ハウスメーカーの業績は好調だ。戸建て住宅の戸数減少を、高付加価値化による単価上昇でカバーするケースが散見される。エネルギー高騰・災害時の備えとして空調効率の高いネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)や蓄電池の需要が高まっている。23年10―12月期の注文住宅受注について「戸数がマイナスでも1棟当たりの単価が上がっていることもあり、受注金額は変わらない」(住団連会員企業経営者)と予測する企業もある。
また、ハウスメーカーが国内の新築着工減少を見越して進めてきたポートフォリオ変革が功を成している。分譲住宅やまちづくり、自社の中古住宅を買い取り、改修して再販する買い取り再販事業、海外事業などが戸建て住宅事業の落ち込みをカバーした。
“住宅メーカー”として本業の戸建需要の取り戻しは必須。しかし需要の急激な変化に対応できる柔軟な収益体制の構築が今後も求められる。