パナソニック・三菱電機・ダイキン…世界が注目「エコキュート」増産体制の照準
日本の空調メーカー各社が注力する製品の一つが欧州向けヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)。ヒートポンプの基幹技術を使った日本向け製品が給湯器「エコキュート」だ。空気中の熱を移動させるヒートポンプ技術は火を使わないため、化石燃料に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を抑えられると世界的に注目されている。これが日本のエコキュート市場拡大の後押しになるとみて各社は需要拡大に備える。(編集委員・安藤光恵)
各社が見据えるのは、全ての新築の建物で省エネルギー基準を満たすことが義務化される2025年度だ。住宅向け省エネルギー設備の一つとしてエコキュートの市場が拡大するとみている。30年度にはエネルギー消費量が実質ゼロの住宅「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」が基準となる予定で、同住宅でのエコキュート採用率は約70%と高いため追い風が見込める。
これに向けエコキュート増産体制の整備を進めるのがパナソニックだ。主力の草津工場(滋賀県草津市)に、21―23年度にかけて総額13億円を投資。22年度に組み立て工程、23年度に貯湯タンクなどの部品を生産する源泉工程を増強し、年20万台の体制を構築した。
さらに25年度までにライン増強を視野に生産能力を向上し、22年度の年17万台体制から8割増となる年30万台への引き上げを図る。水ソリューションズビジネスユニット(BU)の福永敏克BU長は「貯湯タンクなどの大型部品は国内生産が必須のため、需要拡大に合わせて生産能力増強を続ける」と語る。
また、草津工場内にエコキュートに特化したショールーム「e―ステーション草津」を6月に開設。流通業向けに、少ない電力で湯を沸かす仕組みや貯湯タンクによって災害時でも湯を確保しやすい利点などを紹介する。電化マーケティング統括部の松尾圭統括部長は「機能を体感できるショールームと工場見学で理解を深めてもらいたい」と話す。
三菱電機は22年度に群馬製作所(群馬県太田市)のエコキュート生産設備を増強した。生産ラインの強化に加えて効率化にも取り組み、「生産能力はコロナ禍前と比べて約1・5倍まで拡大している」(同社)。今後も市場動向を踏まえて適宜強化を続ける方針だ。
ダイキン工業も脱炭素への関心の高まりからヒートポンプの普及拡大を世界的に進めており、国内需要の拡大も見込む。需要の伸びに合わせて生産量も増やす計画で、茨城県に建設を決めた新工場では主力のエアコンに加えてエコキュートの生産も視野に入れる。
「欧州のA2Wと同様に、日本のエコキュート市場が急激に伸びる可能性がある」(パナソニックの福永BU長)など各社の期待は大きい。ただ、現段階ではエコキュートの普及率は15%にとどまっている。ZEH対応という制度の変化と同時の普及が見込まれるだけに、メーカーには生産強化と同時に消費者の納得感を高める情報提供も求められる。
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