低誘電絶縁材を投入、デンカが100億円事業目指す
次世代通信向け電子基板用に
デンカは独自の低誘電有機絶縁材料(LDM)「SNECTON(スネクトン)」を2024年度下期(10月―25年3月)に市場投入する。同材料は低誘電特性と架橋性を兼ね備えた軟質系材料で、銅張積層板(CCL)の絶縁層などへの使用を見込む。第5世代通信(5G)、ビヨンド5Gなど次世代通信向けの電子基板材料として普及させ、30年度に売上高100億円を目指す。
スネクトンはエチレン―スチレン―ジビニルベンゼンからなる炭化水素系の熱硬化性樹脂。既存材料で相反的な特性とされている、低誘電特性と架橋性を両立させた。誘電正接0・0007とフッ素樹脂と同等レベルの低誘電特性を有し、耐熱性や硬質系材料との相溶性に優れる。また吸水率は0・03%と低く、低粗度銅箔(はく)に密着しやすい特徴も持つ。
CCLに加え、半導体パッケージ基板の層間絶縁材などの用途にも展開する。当面は生産を外部委託し、25、26年度をめどに自社工場での設備導入と量産化を視野に入れる。
5Gは超低遅延、多数同時接続などが可能になる一方、信号の減衰が大きい高周波域の利用に伴う伝送損失の抑制が課題になる。普及拡大で周波数6ギガヘルツ(ギガは10億)未満の「Sub6(サブシックス)」帯に加え、より高周波の同28ギガヘルツや30ギガヘルツ以上の「ミリ波」帯の利用拡大が見込まれる。
高周波域では低誘電特性がこれまで以上に求められ、関連素材の需要拡大が予想される。調査会社の富士キメラ総研(東京都中央区)は、高周波・高速伝送関連材料の世界市場が35年に22年比5・9倍の1兆5071億円に拡大すると予測する。デンカは扱いやすく次世代通信などの課題解決につながる新素材として普及を目指す。
日刊工業新聞 2024年03月07日