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ブリヂストン・住友ゴム…タイヤ4社の設備投資は4期連続プラス、それぞれの使い道

ブリヂストン・住友ゴム…タイヤ4社の設備投資は4期連続プラス、それぞれの使い道

ブリヂストン

構造改革で需要増対応、EV向け開発も加速

国内タイヤメーカー4社の2024年12月期の設備投資合計額は前期比7・8%増の6421億円となる見通しだ。単純比較で4期連続のプラスとなる。半導体不足の緩和に伴う完成車メーカーの供給回復や為替の円安効果などの追い風に加え、欧米を中心にタイヤ需要の回復基調が継続し、各社の業績は堅調に推移する。原材料や海上運賃の高騰にも一服感が出てきた中、設備投資や構造改革などを通じて高付加価値商品群の拡販、需要増大への対応を加速する。(八家宏太)

※自社作成

ブリヂストンは24年12月期に前期比約3%増となる約4300億円の設備投資を計画する。このうち約4割の約1650億円を戦略投資に充てる。連結売上高の6割強を占めるプレミアムタイヤ事業の強化などを実行。石橋秀一グローバル最高経営責任者(CEO)は「ダントツ商品を24年もしっかり出していく」と述べ、高インチタイヤや電動車向けタイヤなど高付加価値品の販売を強化する「プレミアム化」を継続する姿勢を鮮明にする。

一方、同社の前期の欧米事業ではトラック・バス用タイヤの需要低迷による販売減など課題も残した。日本からの人材派遣を含めて同地域のビジネス再構築を進めるなど「変化に対応できる“強い”ブリヂストンを取り戻す」(石橋グローバルCEO)構えだ。

住友ゴム工業は24年12月期に同約20%増の758億円の設備投資を計画する。このうち463億円を海外投資に充て、高機能タイヤの生産能力向上などを進める。

「構造改革の一丁目一番地」(山本悟住友ゴム工業社長)と位置付ける北米事業は前期の販売こそ好調だったが、引き続き生産現場に日本から人材を送り込むなどして生産性を改善する。

横浜ゴムの24年12月期の設備投資計画は同約45%増の910億円と、4社の中でも伸びが目立つ。このうち戦略投資は同約2・3倍の560億円で、インドやフィリピンでの増産などに充てる。26年12月期を最終年度とする3カ年の新中期経営計画では、3年間累計の戦略投資の額を2200億円に設定した。

新中計では成長が続く中国・インド市場のコスト競争に対応するため、1年で低コスト・高効率な工場を立ち上げる施策「1年工場」を推進する。

横浜ゴムの山石昌孝社長は「タイヤ開発のスピードアップに取り組む。(3月28日付で就任予定の)清宮真二次期社長が陣頭指揮を執る」と説明。生産・技術領域で豊富な知見とノウハウを持つ清宮次期社長に期待を寄せる。

トーヨータイヤの24年12月期の設備投資は同約10%減の453億円を計画。4社の中で唯一減額を見込むが、前期に続き好調が見込まれる北米市場の需要に対応するため米国で大口径タイヤの生産能力を増強。セルビア工場のフル生産化などと併せて、収益のさらなる向上へ手を打つ。

各社が高付加価値商品群拡充の一環で開発を進めるのが電気自動車(EV)向けタイヤだ。EVは欧米を中心に市場成長の鈍化が指摘されているが、横浜ゴムの山石社長は海外完成車メーカーとの取引事例を挙げつつ「影響はない」と強調。

トーヨータイヤの清水隆史社長は、スポーツ多目的車(SUV)向けタイヤなどの得意分野やラインアップの幅広さを生かし「(市場の変化に)柔軟に対応していく」としている。

日刊工業新聞 2024年02月28日

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