調理・配膳・片付け担う川崎重工のサービスロボ、レストランで稼働中
川崎重工業は羽田イノベーションシティ(東京都大田区)内で同社が運営する施設「Future Lab HANEDA(フューチャー・ラボ・ハネダ)」で、サービスロボットの実証実験を進めている。一般客向けのレストランとして運用する空間を持ち、開発中の自走ロボット「Nyokkey(ニョッキー)」が食事の配膳と食器の片付け(下げ膳)をする。社内の限られた環境だけでなく、実社会に近い状況で問題を洗い出し、ロボットの迅速な社会実装を目指す。(石川侑弥)
ニョッキーは2本のアームを持つサービスロボット。本体下部に車輪とカメラやセンサー類を搭載し、あらかじめ読み込ませた地図と実際の障害物を認識しながら自律走行できる。2024年度中に他社での試験導入を始める予定だ。
レストランの名前は「AI_SCAPE(アイ・スケープ)」。調理もロボットが担当する。利用客は店舗スタッフに案内されたテーブル席に座り、天板にある2次元バーコードを自身のスマートフォンで読み取り、カレーなど好みの料理を注文する。
オーダーを受けた後、調理する川重の産業用ロボット「RS007L」3台が、レトルトパウチされた料理の湯煎や盛り付けをする。同時に中国プードゥ・ロボティクス製の配膳ロボットが動き、完成した各料理を産業用ロボットからトレーの上に受け取り、提供状態にまで料理を準備する。
ニョッキーはアームでトレーに乗った料理を配膳ロボットから受け取り、利用客のテーブル近くまで移動。利用客の座るいすに貼り付けた拡張現実(AR)マーカーで配膳前に正確な停止位置を確認した後、料理を配膳する。使い終わった容器は利用客の退店後にニョッキーが片付ける。カメラでテーブル上のトレーの縁を検出し、正確に位置を特定。アームを伸ばして容器を処理する。
川重は21年春に医療従事者の業務支援を目的にニョッキーの開発を始めた。新型コロナウイルスの感染拡大で医療施設の入院患者が増加した時期、非接触で院内を巡回して患者の容体を確認できるロボットが求められていた。優先的に開発は進められ、1年弱で実証導入できる状態にまでできた。
店内にはロボットが働きやすい環境を整備した。利用客が使うテーブルといすは一体型とし、いすがロボットの通行を妨害しないように配慮した。またテーブル類はカメラやセンサーが認識しやすいように色を白黒にし、平面を多用したデザインが特徴。ロボットの移動を円滑化するために、配管設備を工夫し床面の段差も解消した。同施設の担当者は「お客さまからの声をじかに聞ける環境で、開発にも反映させやすい。サービスロボット導入のショールームにもなれば」と自信を持つ。
今後はニョッキーをレストラン業務だけでなく、ビル内の巡回業務にも展開する方針。産業用ロボットで老舗の川重は、サービスロボットでも自動化と省人化に貢献する。