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日本の産業ロボットのシェアが30年で88%→50%に急落した背景

産業用ロボットの技術と市場の航跡 #1 ロボット産業の発展経緯の概括
11月29日から12月2日までの4日間、東京ビッグサイトで「2023国際ロボット展」が行われます。産業用ロボットサービスロボット、ロボット関連ソフトウェア、要素部品などが出展され、国内外から多数の来場者が集まります。イベントに関連して、日刊工業新聞社が発行した「産業用ロボット全史」より一部を抜粋し、掲載します。(全8回)

産業用ロボットの源流は1960年代初頭のアメリカにありますが、製造現場で使える生産機械としての市場は1980年代から日本を中心に形成されていきました。1980年代の日本の産業用ロボット市場は自動車メーカや電気機器メーカといったパワーユーザの積極的な活用努力と、これに応えるべく多くの機械メーカ、電機メーカによるロボット事業参入により、急速な初期成長を果たしています。その結果、1990年には全世界での日本製ロボットの供給シェア88%、日本市場の需要シェア75%という圧倒的なレベルに達し、日本はロボット大国と言われるようになりました(図1)。

図1 産業用ロボットの世界市場における日本製ロボット

その後1990年初頭にバブル経済が崩壊し、製造業の設備投資抑制により産業用ロボットの出荷台数は減少に転じます。ロボット事業は厳しい時代を迎え、ロボットメーカの淘汰も進みました。国内向け出荷は不振が続くなか、輸出を中心に徐々に回復へと向かいます。2000年のITバブル崩壊により出荷台数が激減しましたが、2001年を底として再び回復していきました。初期成長期には圧倒的な国内需要に支えられていたロボット産業は、今や輸出型産業へと変貌を遂げました。ただし、2000年代には日本製ロボットの世界シェアダウンが始まりました。

ロボット産業は2009年のリーマンショック時には、三度目の出荷激減に見舞われました。生産財産業である産業用ロボットの市場状況は、製造業の設備投資意欲に大きく左右されるので景気の影響を大きく受けますが、リーマンショックの影響が小さかったアジア市場の需要に支えられ一気に回復しました。特に2013年から2017年の5年は、爆発的な中国需要に支えられて日本製ロボットの出荷台数は年間10万台規模から20万台規模へと倍増し、バブル崩壊以降20年ほど続いたロボット産業の市場停滞は終わりをむかえました。

一方、産業用ロボットの世界需要の伸びは、日本製ロボットの出荷の急伸をはるかに上回っており、日本製ロボットのシェアはダウンし続け、2020年ごろには世界シェアは50%の水準となりました。中国をはじめとするアジアの新興工業国製ロボットが市場に現れ、かつての多数の日本メーカと数社の欧州メーカで構成されていたロボット産業の世界構図は大きく変化し始めています。

2020年代の産業用ロボット市場は、米中貿易摩擦、中国市場の急成長から安定成長への変化などの影響から、世界市場の急拡大は一旦沈静化しています。さらに世界規模での感染症禍、世界各国の国内分断化傾向、ウクライナ情勢に表れた世界情勢の不安定化など、世界経済の先行きは不透明な状況にあります。

しかし、日本のロボット産業の世界シェア50%は、依然として日本が強さを発揮しているとして誇るべき数字です。また、全世界の産業用ロボットの年間出荷台数は急増したとはいえ40万台にすぎず、ロボットを活用している製造業分野はいまだ限定的であるといえます。世界の製造業において、ロボットの活用が未開拓な潜在需要は圧倒的に多く、今後の世界市場開拓と国際競争において日本のロボット業界がどのようなリーダーシップを発揮するか、これは日本の製造業のグローバル化の一つの姿として問われることとなります。
(「産業用ロボット全史」p.2-4)

<販売サイト>
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<書籍紹介>
日本は産業用ロボット生産台数で、世界シェアの半分を占めています。一大産業となった産業用ロボットはどんな技術に支えられ、どのような変化を遂げるのか。長年、産業用ロボットの現場にいた著者がロボットの要素技術から自動化までを解説します。
書名:産業用ロボット全史
著者名:小平紀生
判型:A5判
総頁数:256頁
税込み価格:3,300円

<編著者>
小平紀生 (こだいら のりお)
1975年東京工業大学工学部機械物理工学科卒業、三菱電機株式会社に入社。1978年に産業用ロボットの開発に着手して以来、同社の研究所、稲沢製作所、名古屋製作所で産業用ロボットビジネスに従事。2007年に本社主管技師長。2013年に主席技監。2022年に70 歳で退職。
日本ロボット工業会では、長年システムエンジニアリング部会長、ロボット技術検討部会長を歴任後、現在は日本ロボット工業会から独立した日本ロボットシステムインテグレータ協会参与。日本ロボット学会では2013年〜2014年に第16代会長に就任し、現在は名誉会長。

<目次(一部抜粋)>
序章  産業用ロボットの市場と生産財としての特徴
第1章 産業用ロボットの黎明期
第2章 生産機械として完成度を高める産業用ロボット
第3章 生産システムの構成要素としての価値向上
第4章 ロボット産業を取り巻く日本の製造業の姿
終章  ロボット産業の今後の発展のために

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