極薄で高い耐水性…理研が開発した「衣類に貼れる有機太陽電池」がすごい
理化学研究所のション・スーシン特別研究員と福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫チームリーダーらは1日、薄型有機太陽電池の耐水性を向上させた。水中に4時間つけても発電効率の低下を抑えられたと発表した。厚みは3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)と極めて薄い。ウエアラブルデバイスの電源などに提案していく。
有機太陽電池の銀電極と発電層の密着性を改善した。従来は銀電極と発電層の間に酸化モリブデンなどの正孔輸送層を挟む。今回は銀電極の銀を酸化させ、酸化銀を正孔輸送層として機能させた。密着力が2倍以上になり、水につけても剥離しなくなった。
酸化銀は発電層の上に銀を成膜したのち、大気中で24時間加熱して作る。銀電極と発電層の界面に酸化銀が形成される。有機太陽電池のエネルギー変換効率は14・3%。性能を示すフィルファクターは71%。水に4時間ひたしてもエネルギー変換効率の低下率は11%と小さかった。水中で300回伸縮させた場合の低下率は4%。1時間水中で発電できることを確認した。
薄さと耐水性の両立は難しい。薄く軟らかいと身に着けやすく、耐水性向上で雨や汗に強くなる。衣類に貼れる電源として提案していく。
日刊工業新聞 2024年02月02日